南北で昨年夏の甲子園出場校が、そろって道大会出場を決めた。札幌地区では、甲子園準優勝の北海が5本塁打と長打攻勢で札幌南を下し、3年連続71度目の南大会進出を決めた。昨秋、今春は地区予選で敗退しており、3季ぶりの道大会出場で、3年連続の甲子園を狙う。空知地区では昨夏甲子園に初出場したクラークが3-0で岩見沢農を下し、2度目の北大会代表切符をつかんだ。

 夏の甲子園全国最多37度出場を誇る「常連」北海が、1年ぶりに道大会に戻ってくる。2季連続地区敗退の鬱憤(うっぷん)を、豪快に5発のアーチ攻勢で晴らした。平川敦監督(46)は「(自分が監督になって)1試合で5発は初めて」と驚いた。

 口火を切ったのは7番井上雄喜左翼手(3年)だ。2回2死から公式戦初となる先制中越えソロ、1-2とリードされた6回1死一塁では左越え場外への逆転2ランで流れを引き寄せた。その裏5-5に追い付かれると、8回先頭の1番鈴木大和中堅手(3年)が左越えソロで勝ち越した。「このままじゃ負ける。続かなきゃと思った」と3番川村友斗一塁手(3年)。直後の無死一塁、2戦連発の右中間2ランでダメを押すと、9回1死一塁では自身公式戦初となる2打席連発の中越え2ランで、札幌南の好投手井沢を攻略した。

 昨秋の地区予選は初戦で敗れ、シードを失った今春も再び地区敗退。どん底の中、選手たちは、ある希望を見いだした。「大西さんたちの(前)チームも2季連続地区で負けても夏は取った。僕たちもそれに近づこうと誓い合った」と川村。精神的にめいらぬよう、どん底からはい上がった先輩の姿を思い返し、まずは南大会にこぎつけた。

 昨夏、甲子園での2発以降、不発だった主砲川村も“ペッパー改革”で2戦3発とよみがえった。大会前1週間、ペッパーゲームと呼ばれるボールを芯にこつんと当てるだけの地味な練習を井上と一緒に毎日300球実施。そのコンビがそれぞれ2発と量産し「こんなに効果が出るとは。驚いた」と手応えを口にした。

 ノーシードから難敵札幌南を倒しての南大会切符。川村は「まずは1試合ずつ勝っていくこと」と謙虚に前を向いた。昨秋の新チーム発足後、平川監督から「勘違いするな」と甲子園準優勝の映像は封印した。

 OBの期待も昨夏の栄光も今は一切考えない。ひたむきに1勝を目指し、新たな歴史を刻んでいく。【永野高輔】