今センバツ8強の東海大福岡の夏が、突然終わった。6回に一挙5得点し、あと2点でコールド勝ちと圧勝ムード。5点をリードして9回を迎え、2死一塁と勝利まであと1人とした。大黒柱の安田大将(だいすけ)投手(3年)がいる。「もう大丈夫」と誰もが勝利を確信したに違いなかったが、一塁側ベンチに、まさか悪夢が待ち受けているとは…。

 8番打者から4連打を浴びて3点を返された。安田の表情がけわしくなる。さらに遊撃手の失策で1点を失い、四球を与えて2死満塁。気付けば一打逆転のピンチとなった。流れを食い止めようと投じた外角のスライダーが甘く入り、打球が右中間ではずむと、安田はガックリとマウンドでうなだれた。

 安田 早く終わりたいという気持ちがあって、ストライクを取りにいってしまった。打たれた瞬間、終わったと思った。

 安田はナインに抱きかかえられ整列に加わった。ベンチから引き揚げても泣き崩れナインに慰められた。「簡単に勝てる相手ではないとは思っていたが、油断した気持ちがあったかもしれません」。絞り出すように言葉を口にした。「夏は1球で終わってしまう。その怖さを後輩に伝えていきたい」。今センバツは、清宮幸太郎内野手(3年)擁する早実(西東京)を破って8強。右横手からのキレのある直球と変化球をグレードアップさせ、春夏連続出場を狙った。この日も8回までは5安打1失点。完投ペースだったがベスト16目前で悪夢に見舞われた。

 杉山繁俊監督(60)も、しばらく言葉が見つからなかった。「最後は外角球での勝負が多かった。内角球を1つでも投げていれば…。野球はホントに分かりません」。昨年秋から奇跡の逆転劇を演じてきたナインが、最後の夏は壮絶な悲劇に散った。【浦田由紀夫】