第1シード明桜が5-1で金足農を破り、8年ぶり9度目(前身の秋田経法大付時代を含む)の夏の甲子園出場を決めた。無失点と好投していた最速146キロ右腕の山口航輝(2年)が、5回の攻撃中に右肩を痛めて交代。窮地に立たされた選手たちは、今春就任の輿石重弘監督(54)が導入したメンタルトレーニングの成果を発揮し、チーム一丸で乗り切った。

 明桜がアクシデントを乗り越え、真夏の球場に満開の桜を咲かせた。優勝の瞬間、選手たちはマウンドに駆けより、縦じまのユニホームを重ね合わせて喜びを爆発させた。早川隼喜主将(3年)は「山口がけがをして逆に結束力が強くなった。全員でつかんだ優勝」と胸を張った。

 2点リードで迎えた5回の攻撃時、チームに衝撃が走った。四球で出塁した山口が、けん制帰塁の際に利き腕の右肩を痛めた。約5分の中断後、代走を拒んだ山口は後続の適時打で3点目のホームを踏むも、マウンドに戻ることはできなかった。2安打無失点と好投を続けていたエースの交代。だが、勝利を疑う者は1人もいなかった。

 急きょアップを開始した佐藤光一投手(3年)に、野手たちは「あと何点ほしい」と冗談。背番号1を背負う佐藤は「いらない」ときっぱりと首を降った。早川主将も「甲子園につれていってやるから、マウンドを降りろ」と山口を説得。「山口を甲子園で投げさせる」がチームのモチベーションになった。

 今春、一般公募を経て就任した輿石監督導入のメンタル練習が奏功した。選手と寮生活を共にする同監督は毎朝、練習前に腹式呼吸やプラス思考につながるイメージトレーニングを実践。「明るさを失ってはダメだ」とチームの雰囲気を一新した。すると県公式戦無敗の14連勝(地区リーグ除く)で春夏連覇を達成。05年から続いていた「春の優勝校は勝てない」というジンクスを打ち破った。