第3シードで創部34年の藤枝明誠(静岡)が23-10で日大三島を下し、春夏を通じて初の甲子園出場を決めた。7回表に雨が強くなり、2時間56分の中断を挟んだが、集中力を切らさずに日大三島を圧倒。前日25日の準決勝静岡戦の23安打に続き、20安打を重ねて打ち勝った。決勝での23得点は、大会史上最多得点になった。夏の甲子園は8月4日に抽選会、7日に開幕する。

 冷たく激しい雨の中でも、藤枝明誠ナインは集中を切らさなかった。9回裏2死、エース久保田蒼布(そう=3年)の134球目。相手打者が中飛に倒れ、5時間24分の戦いに終止符が打たれた。瞬く間に久保田を中心に歓喜の輪が広がった。ノーゲームの不安も抱きながらつかんだ初の甲子園切符。グラウンドで、応援席で涙があふれた。

 打線は前日の勢いのままに初回3点を先取。その後も攻め続け、3回、7回、8回と3度の打者一巡で計23得点。3安打3打点で打線をけん引した中田悠斗主将(3年)は誇らしげに言った。「甲子園に初出場できて本当にうれしいです。『最強のヘボ軍団』を目標に掲げて、取り組んできたことが結果につながりました」。

 長時間の中断にも選手は冷静だった。「2時間くらい中断しそうなのは分かっていたので、いったんスイッチを切って、整備が始まってからロッカーで『もう1回気合入れろ!』と言いました」と中田。再開後のスコアだけを見ても11-8と、相手を上回った。13年秋から指揮を執る光岡孝監督(39)も「私は何もしてない。子どもたちの力でつかみとってくれた」と目を細めた。中田が言うように、指揮官は新チーム発足初日に「お前らは『最強のヘボ軍団』になりなさい」と告げた。個々の能力は高くないが、守備を中心に厳しい練習に耐え、地力をつけてきた。打撃では低めの見極めと、膝より上のボールをたたきつけることを徹底。最後の夏には、静岡の池谷蒼大(3年)、日大三島の海野陽日(3年)と県屈指の左腕を攻略した。

 中田は1年前の主将で、兄海斗(拓大1年)からLINEで「俺たちの分も甲子園に行ってくれ」と激励されていたことも明かした。「気持ちは技術を上回ると感じました。練習は厳しかったけど最後に花が咲きました」。

 15年秋にリニューアルしたユニホームは、漫画「タッチ」の「明青学園野球部」のデザインにそっくり。「サッカーのまち」藤枝市からの出場も含め、全国的にも注目されることは必至だ。だが、そんな話題性よりも、「甲子園で勝つこと」が目標。聖地でも「最強のヘボ軍団」で輝きを放つ決意だ。【鈴木正章】

 ◆全国高校野球静岡大会決勝最多得点 藤枝明誠の23点は、決勝での史上最多得点になった。これまでの最多は、52年の静岡商で18点(静岡商18-3浜松商)だった。