全国高校野球選手権の新潟県代表・日本文理は5日、鳴門渦潮(徳島)との1回戦(12日)に向けた練習を日本生命保険貝塚野球場(大阪)で行った。左打者がそろう日本文理打線の中で、1番打者の飯田涼太中堅手(3年)がキーマンの1人だ。新潟大会ではチーム最高打率の5割2分2厘をマーク。鳴門渦潮の左腕エース河野成季投手(3年)攻略のため、積極的にチャンスをつくると意気込んでいる。

 しぶとく内野の間を抜けるゴロが左前、中堅方向に飛ぶ。走者をつけた打撃練習、飯田は中堅から左方向に打ち返す。それでも「投手が打たせようとする低めにも手を出した。まだダメです」と、自己採点は厳しい。そしてケージの外で素振り、ティー打撃を行った。

 チームはこの日、2時間の練習時間の大半を打撃に割いた。組み合わせ抽選会が行われた前日4日の夜、さっそく鳴門渦潮の徳島大会決勝のビデオを全員で見た。日本文理は、ベンチ入り18人中10人が左打者。大井道夫監督(75)は相手の左腕河野の対策として、引っ張らずに逆方向を狙うことを徹底させた。

 飯田も大井監督から「打つべき球と手を出してはいけない球を見極めろ」とアドバイスを受けた。「相手投手はスライダーが多い。高めに必ず甘い球が来る。それを逃さないように」。攻略方法はイメージできている。

 大井監督は「飯田は左を苦にしないからね」と信頼を寄せる。中越との新潟大会決勝は、左腕山田叶夢投手(2年)から8回裏に4-4に追いつく犠飛を放った。通算打率はチームトップの5割2分2厘。合計12安打、4盗塁もチーム最多。リードオフマンとして甲子園出場に貢献した。

 ただ、「県大会はもう終わったこと」と、1日に大阪入りしてからは「まだ体のキレがいまひとつ」と練習中にダッシュを繰り返す。宿舎でも自室に戻ると腹筋を行うなど自らをいじめ抜く。

 茨城出身。都和中時代に在籍した少年硬式野球「つくばヤング」のチームメートで、今夏の甲子園に出場する仲間はいない。「みんなから『頑張れ』と激励されました。やらないと」。旧友の思い、そして日本文理の切り込み隊長としてのプライド。ベストの状態で甲子園の打席に入る瞬間を楽しみにしている。【斎藤慎一郎】