投げるだけでなく、1-1同点の7回表1死二、三塁で自らスクイズを成功させた。「失敗したら、サインを出した中井監督が悪いと思っていました」。笑顔で振り返ったほどで、そこから気持ちに余裕もできた。7回裏1死で足がつってしまい、ベンチ前で治療を受けた。そこでも「お客さんの顔を見る余裕があった」。強いメンタルで強豪校に投げ勝った。

 男の約束を果たした一戦でもあった。広陵へ入学するまで、福岡で生まれ育った平元。同じ福岡出身の秀岳館・半情冬馬内野手(3年)とは中学時代に交流があった。チームは違えど、共通の野球仲間を介して知り合った2人は、互いの家に泊まりに行くほど仲が良かった。甲子園を目指し、広島と熊本に離ればなれになる時は、「甲子園で会おう」。健闘を誓い合った。

 あれから2年半-。約束を果たすことができた。結果は1三振を奪い、2安打を許した。「ちょっと意識はしました。(半情から)オレの勝ちやと言われそう」と苦笑いしながら、顔はすがすがしかった。

 チームはこれで、07年に準優勝して以来となる夏の甲子園16強に残った。3回戦の相手は聖光学院で、平元は「次も最少失点でいきたい」。先輩たちを超える頂点を目指し、左腕を懸命に振り降ろす。【山川智之】

 ◆平元銀次郎(ひらもと・ぎんじろう)1999年(平11)9月30日、福岡県生まれ。父の影響で小2から金田ジュニアクラブで野球を始め、投手を務める。尊敬する中井監督が率いる広陵の門を叩き、1年夏からベンチ入り。2年から主戦投手として活躍。180センチ、73キロ。左投げ左打ち。