空知地区はクラークが3-1で深川西を下し、創部4年目で初の秋季全道出場を決めた。昨夏の甲子園で登板した左腕エース安楽裕太郎(2年)が9回7安打1失点で完投し、佐々木啓司監督(61)に駒大岩見沢野球部長時代の10年以来、7年ぶりの秋の円山をプレゼントした。

 力なく打ち上がった白球が右翼手のグラブに収まった。マウンド上で確認した安楽が両手を高く上げた。勝利の味をかみしめるように3秒間、動きを止めた。昨秋、地区3回戦で同じ深川西に敗れた。1年後の同日にリベンジ。「ホッとしました」。柔和な表情に戻ったエースが、実感を込めた。

 チームの浮沈が自身の成績と連動した。マウンドに立った昨夏の甲子園後、制球難に陥った。昨秋、1番を背負いながら、半年後の春は、スタンド最前列で大声を出し、太鼓をたたいた。チームは全道に届かなかった。再びベンチ入りした夏は、回復途上で南大会初戦敗退に終わった。毎朝1時間の走り込みなどで下半身をいじめ、フォームも変えて秋に臨んだ。「がむしゃらな練習で太ももが4センチも太くなった」。3試合計23回を1人で投げ、安定感が戻った。

 「秋の円山は、あの時以来だな…」。試合後の佐々木啓司監督(61)は、感慨にふけった。7年前の10月8日、駒大岩見沢の閉校が発表された。秋季全道2回戦の試合前、同校部長だった佐々木監督から選手に事情が伝えられた。「当日の試合は勝ったけれど、お先真っ暗。野球どころではなかった」と、当時監督だった達也部長(33)は言う。

 上の空で戦い、準決勝で敗れて以来途絶えた佐々木親子のセンバツへの道。再びつないだのは、駒大岩見沢野球部OB安楽公一さん(45)の長男がマウンドに立つクラークだった。公一さんは「監督が私の原点。人間的にも必ず裕太郎が成長できると信じて送り出した」と、勝利を喜んだ。

 昨春の初全道、入学したばかりだった主将の千葉慶大遊撃手(2年)は出場しながら結果を出せず、チームも函館工に敗れた。「次は打って1勝できるように、コンディションを整えたい」。安楽は「1戦1戦戦って、また大歓声の甲子園のマウンドで投げたい」と言う。指揮官に9回目のセンバツをプレゼントすべく、クラークが秋の円山に乗り込む。【中島洋尚】