駒大苫小牧が旭川実を12-10で下し、13年以来4年ぶり5度目の秋制覇を果たした。2-5の4回2死から5連打で逆転、7-5の7回も、2死から四球と相手失策を挟み4連打で5点を挙げ、両軍ともに17安打の打撃戦を制した。13季ぶりに道大会出場を逃した昨秋から1年。伝統のつながる打線が復活し、先発全員安打で頂点に返り咲いた。14年以来のセンバツ(来年3月23日開幕、甲子園)切符をほぼ確実にし、明治神宮大会(11月10日開幕、神宮)出場権を獲得した。

 秋空高く、人さし指を突き上げた。本家・駒大苫小牧伝統のNO・1ポーズが復活した。前日は札幌日大と延長12回の激闘に勝ち、この日は旭川実との打ち合いを制した。準決勝から2日で21回、計6時間9分。就任2度目の聖地切符を確実にした佐々木孝介監督(30)は「投手は連戦で疲れがたまっていたので、何とか野手で勝とうと。野手が頑張って投手を助けてくれた。感無量」と喜んだ。

 主将の大槻は「気を抜かず、絶対勝ちたいという思いが結果につながった」と振り返った。3点ビハインドの4回2死、2番・大沼の内野安打から4連打。この回一挙5点を挙げると、7回も2死から7番・高嶋の右翼線三塁打から敵失、四球を挟んで4連打で5点を挙げ、突き放した。

 わがまま集団が変身した。現2年生のうち9人が昨秋、13季ぶり地区敗退の屈辱を味わっていた。佐々木監督は「この代は中学時代の実績で野球をしている者が多かった」と言う。能力は高くとも一体感を重視し、今夏は大槻と鈴木以外の7人がメンバーから外れた。7月に、その代が中心となった新チームが発足。8月の湧別遠征で遠軽、旭川西などと練習試合を行い、5連敗した。「調子悪いからお前が頑張れよ」と人任せにする選手もおり、まとまりは、ほぼ皆無だった。

 「何とか気持ちを1つにしたかった」と大槻。駒大苫小牧は練習前に1分間「わっしょい」と声を合わせながら走る伝統儀式がある。8月の屈辱後、この儀式の前に無言で15分間、全員で手足を合わせ並んで歩く“行進の儀式”を追加。エゴを捨てチームの「つながり」を求めてきた佐々木監督の思いを、新たな方法で心に染みこませた。

 OBの米大リーグ、ヤンキース田中将大がプレーオフ初勝利を挙げた日に、後輩たちも新たな1歩を切り開いた。「まだまだ、この子らは伸びしろがある」と佐々木監督。14年センバツは2回戦で強豪・履正社にサヨナラ負けを喫した。自身が主将を務めた全盛期のように、連打で打開する駒苫流に磨きをかける。【永野高輔】

 ◆駒大苫小牧 1964年(昭39)創立の私立校。生徒数688人(うち女子は272人)。野球部は学校創立と同時に創部され、甲子園は春3度、夏7度出場。夏は04、05年に小倉(福岡)以来、57年ぶり史上6校目の連覇を達成した。史上2校目の3連覇を狙った06年夏は決勝再試合でエース斎藤佑樹(日本ハム)の早実に惜敗。部員は1、2年生で55人。主なOBにヤンキース田中将大、OGには橋本聖子参院議員がいる。所在地は苫小牧市美園町1の9の3。笹嶋清治校長。