利府(宮城2位)が青森山田(青森1位)を7-6で下し、初戦を突破した。先発したエース兼4番の長谷川祥太投手(2年)が投打に躍動。投げては県4連覇中の相手に9回5安打4奪三振6失点と粘って完投し、打っても5回に同点となる左犠飛を放った。明日15日の準々決勝は聖光学院(福島1位)と対戦する。

 打球が上がった瞬間、長谷川は肝を冷やした。7-3の9回2死満塁。相手1番長尾凌弥内野手(2年)の当たりが中堅手の頭上を越える間に、3者が生還。打者走者が一気に三塁を狙ったが、中-遊-三と転送して間一髪アウト。劇的な幕切れに思わず大黒柱は「ヨッシャー」と叫んだ。

 長谷川 さすがに冷や汗をかいた。バックを信頼し、勝てて正直うれしい。

 球が速いわけでも、球種が多いわけでもない。130キロに満たない直球に、変化球はカーブとスライダーだけ。それでも強打の青森山田を相手に気合で完投した。長谷川は「能力だけじゃなく強い気持ち。球速は意識してない。スライダーを引っかけてくれた」。丁寧にコースへ投げ込み、12個のゴロアウトを奪った。

 夏の敗戦を糧にした。今夏の宮城大会、柴田との3回戦は先発を任されたが、チームは延長13回にサヨナラ負けした。「相手の強い気持ちに押し返された。もっと気持ちを、内じゃなくて外に出そうと思った」。旧チームでは闘志を表に出すタイプではなかったが、新チームでは「エース兼4番」を任されたこともあり、体で表現するようになった。この日、マウンド上ではほえたり、4回には投球中に鼻血を出すほど熱中していた。

 今秋から就任した石垣賢監督(49)は「内に秘めた闘志はいらない。前のチームでは物足りないところもあったが、ためていたものを外に出せるようになった」と目を細めた。長谷川は次に向けて「次もベストパフォーマンスを出せるように」と聖光撃破を誓った。【高橋洋平】