夏の甲子園10度の出場を誇る古豪福岡(岩手)が盛岡南を10-3の7回コールドで下し、12年連続の初戦突破を果たした。同校名物のバンカラ応援をバックに、1番藤本蓮太内野手(3年)が野球人生初となる本塁打を放った。2回に左越え3ランを放つなど一挙7点を先制し、押し切った。1901年(明34)に学校が創立され、翌年に野球部創部の伝統校が33年ぶりの甲子園出場に向けて、13日の3回戦は花北青雲と激突する。

 目に見えない力が、後押ししてくれた。164センチ、60キロの小兵藤本が、小中高通じて初のアーチをかけた。2回に2点を先制し、なお2死二、三塁。内寄りの真ん中に甘く入った初球の真っすぐを引っ張り、左翼席に3ランを突き刺した。

 藤本 レフトの頭は越えると思ったけど、自分でもびっくり。本来の持ち味は長打じゃなくてチャンスメーク(笑い)。ビッグイニングで勝利に貢献できたのはうれしい。

 三塁側スタンドには、同校名物のバンカラ応援団が弊衣破帽のいでたちで陣取っていた。95代目の嶋野将之応援団長(3年)が音頭を取り、得点時にはバケツの水をかぶるパフォーマンスでスタンドを沸かせた。高2で嶋野と同じクラスだった藤本は「仲が良かったし、必死に応援してくれていたから、絶対に負けられなかった」と12年連続の夏初戦突破に胸を張った。

 伝統校福岡が夏の初戦に強さを発揮するのには理由があった。毎年、3年生の応援団が学校のある二戸市から約80キロの道のりを一日中歩いて、初戦の応援に駆けつける「80キロ行軍」が同校の伝統行事だ。歩き疲れをものともせず、パワフルな応援で初戦突破をアシストしてきた。今年も6日の午前8時に出発、7日の同9時に球場へ到着したが、初戦は残念ながら雨で中止。応援できずに顧問の車でとんぼ返りした。この日、3年生のバスに同乗して球場に来た嶋野は「80キロ行軍からの初戦応援が1つの流れだったけど、雨は仕方ない。今日は大差で勝ててよかった」と笑顔を見せた。

 伝統の10本線ソックスは、甲子園出場回数の10回を意味している。藤本は「自分たちの代で1本増やせたら」と目を輝かせる。名物のバンカラ応援団をバックに、県北の雄が古豪復活の看板をぶち立てる。【高橋洋平】