能代松陽165センチエース左腕の佐藤開陸(かいり=3年)は「技巧派」で甲子園切符をつかむ。前日15日に150キロをマークした金足農の吉田輝星(こうせい)投手(3年)と対照的な投球内容で好発進。5回途中から登板し、最速140キロの直球と変化球を巧みに操り、4回1/3を1安打無失点で横手城南を5ー1と退けた。昨秋の東北大会4強も、センバツ出場を逃した悔しさを最後の夏に晴らす。

 佐藤開が「柔よく剛を制す」を証明する夏をスタートさせた。2-1で迎えた5回表2死満塁で登板。一打逆転の危機を1球で遊ゴロに打ちとり、スタンドをどよめかせた。「誰にも負けたくない。吉田はスピードがすごくて三振をとれるけれど、自分は打たせてとってゼロに抑える。夏は速球派より技巧派が勝つ。投球術で勝負して甲子園に行きたい」。築きあげてきた信念は曲げない。

 投げたい鬱憤(うっぷん)もたまっていた。今春は2番手投手育成の方針もあり、公式戦は秋田商との県大会2回戦に2イニング(3奪三振無安打無失点)を投げただけ。「夏は全部投げるつもりだったので、先発じゃなくて少し悔しかった。早くマウンドに上がりたかったので、ずっと監督に目線を送っていました」。球が浮く場面も多く、2四球は反省材料だが、要所では直球やカーブ、カットボールを低めに集めて三振も奪取した。7回には送りバントに猛ダッシュし二塁封殺。残った一塁走者もけん制死。投球以外も圧巻の技だった。

 変化球を生かすために、今冬は直球を磨いた。昨秋の最速は140キロだが「もっと出てると思う」。プロ野球選手や大阪桐蔭の投手映像をみて研究し、ブルペンで模索。最終的には巨人菅野の「前を大きくする意識」で手応えを得た。縫い目のかける位置も変え、シュート回転もなくなった。

 昨秋の東北大会準決勝で聖光学院(福島)に2-16で大敗し、センバツ切符を失った。今春の県大会準々決勝では大曲に0-10の無安打無得点6回コールド負けの屈辱。「春よりも、夏の甲子園ですよ」。7年ぶりの夏切符だけは、誰にも譲るつもりはない。【鎌田直秀】