<高校野球栃木大会:白鴎大足利3-2文星芸大付>◇19日◇準々決勝◇宇都宮市清原球場

 文星芸大付・田名網祐太選手(3年)は昨夏、病を宣告された。学校で献血を受け、異常が発覚。病院で再検査を受けると白血病だった。「頭が真っ白になりました」。翌日から無菌室での入院生活が始まった。3日に1回のペースで抗がん剤を服用。髪の毛や体毛がすっかり抜け落ちた。ただ副作用より苦しかったのは、入院中に仲良くなった患者の死だった。「悲しかったです。同時に自分が生きていけるのか不安になった」。耐えきれずに涙することも少なくなかった。

 支えになったのが、チームメートの見舞いだった。「『早く戻って来い』って言われるたびに、また野球がやりたいと強く思いました」。約1年に及ぶ闘病生活を乗り越え、5月にグラウンドへ戻った。チームメートから温かい拍手で迎え入れられ、自分のロッカーもそのまま。野球ができる喜びをひしひしと感じた。

 最後の夏はメンバーに入れず、スタンドから戦況を見守った。白鴎大足利に敗れて4強進出ならず「悔しかったです。この3年間を大切にしていきたい」。日常のありがたみを人一倍理解した高校生活。何にも代え難いものを知った彼は強い。【山川智之】