恵まれない環境を力に変えた沖学園(南福岡)ナインが、春夏通じての甲子園初陣を勝利で飾った。4回をのぞく毎回15安打でスタメン中6人がマルチ安打をマークした。鬼塚佳幸監督(36)も「すべてがうまくいきすぎて怖い」とナインをほめた。

 4番吉村が3回に先制適時打。「大阪に入ってテレビを見てたら甲子園で活躍した昔の人が『バットを抱いて寝ていた』という話があったので、昨夜初めてバットを抱いて寝たら打てました」と5打数3安打の活躍に自分でも驚いていた。

 学校グラウンドは右翼が60メートル程度しかなく、右翼フライでもネットを越えることもあるという。大きな当たりを打てば隣接する「アサヒビール博多工場」の巨大タンクを直撃する。多少タンクがへこむらしいが、月に1回、工場が回収してくれて30球くらいが返却されるという。「グラウンド外に出ないように低いライナーを意識して練習してきた」(吉村)。周囲にも支えられた結果、甲子園で歴史を塗り替えた。

 「全国区」の男女ゴルフ部から、ゴルフボール200球をもらい、細い鉄パイプで打つ練習もしてきた。前日5日、沖学園ゴルフ部出身の福田真未(26=えんホールディングス)が「前祝い」とばかりにツアー通算2勝目を挙げた。互いに刺激し合っての甲子園メモリアル勝利だった。【浦田由紀夫】