【第1試合(10:00) 日大三(西東京)-金足農(秋田)】

 元球児による「レジェンド始球式」はPL学園OBの桑田真澄氏が登板。

 日大三が優勝した11年以来7年ぶり3度目の決勝進出を目指す。打線はここまで4試合でチーム打率3割2分6厘と好調で、出場56チーム中トップの31得点を挙げている。打率4割3分8厘を誇る5番中村ら中軸に加え、同4割の9番佐藤英雄、主に途中出場で7番を打つ飯村ら下位打線も振れている。下関国際(山口)との準々決勝では7回2死までノーヒットノーランに封じ込まれながら、2点を追う8回に3者連続「初球打ち」の3連打で同点とし、なおも2死三塁から3番日置が決勝打と粘りも発揮した。今大会まだ3安打の4番大塚の奮起に期待がかかる。

 前日19日は兵庫・西宮市内のグラウンドで練習。フリー打撃では約3メートル前から打撃投手がボールを投げ、マシン打撃では約150キロに設定されたボールを打ち込み、吉田の速球対策に取り組んだ。

 投手は22回を投げ32個の三振を奪うなど、全4試合で好救援を見せている河村の存在が心強い。ボールの出どころが見えにくい「招き猫投法」で知られるヤクルト成瀬にそっくりのフォームから4種類の変化球を操る左腕。下関国際戦でも大会最長の7回を投げ4安打10奪三振1失点の好投で終盤の逆転劇を呼ぶなど、試合を重ねるごとに活躍が光る。

 公立校として旋風を巻き起こす金足農は勝てば、実に1915年の第1回大会で準優勝した秋田中以来103年ぶりとなる秋田勢の決勝進出となる。ちなみに秋田中が準決勝で下した相手は東京勢の早実だった。103年前に続けるか。

 カギを握るのはプロ注目の最速150キロ右腕・吉田の出来だ。4試合連続完投で防御率2・25。06年斎藤佑樹(早実)、12年松井裕樹(桐光学園)らに並ぶ夏の甲子園最多タイ4試合連続2桁奪三振と大車輪の活躍を見せるが、連戦となった18日の近江(滋賀)との準々決勝前、起床時には左足股関節痛を発症していた。中1日でどこまで回復できるか。練習を行わず休養にあてた19日、吉田は「昨日の疲れは残ってない。状態は普通にいい。今日が試合でも投げられる」と話した。本調子となれば、史上初となる5試合連続2桁奪三振にも期待がかかる。

 神がかり的なミラクル勝利が続く。横浜(南神奈川)との3回戦は、2点を追う8回に6番高橋がバックスクリーンに高校初本塁打となる逆転3ラン。近江戦では驚きの逆転サヨナラ2ランスクイズも飛び出した。選手交代をしない極めて異例な「9人野球」も春季地区大会から公式戦19戦連続継続中。旋風を後押しするように、4強入りを決めた18日には学校の豚舎で9匹の子豚も産まれた。得意の終盤勝負で「とんとん」拍子の勝利を飾り東北勢悲願の頂点へ王手をかけることができるか。

 見どころは試合前にも。始球式のマウンドにはPL学園OBの桑田氏が立つ。84年夏に「雑草軍団」とも称された金足農が快進撃で4強に進み、準決勝で対戦したのが当時の「最強軍団」PL学園だった。2-1でリードして迎えた8回、2年生エースだった桑田氏に逆転2ランを打たれチームは敗れた。奇しくも同じ8月20日のこと。金足農にとって奇跡的な巡り合わせは、さらなるミラクルも予感させる。

◆日大三のおもなOB ヤクルト近藤一樹、阪神高山俊

◆金足農のおもなOB ヤクルト石山泰稚、元中日小野和幸