時代が変化する中、心と体を強化する伝統の練習を続ける高校がある。28日、今夏の甲子園で4強の日大三(東京)は、恒例の「冬の強化練習」を打ち上げた。日刊スポーツのアマチュア野球担当記者が伝統の練習に潜入した。

日大三の冬の強化練習、通称「地獄の冬合宿」の最終日。ゆずの「栄光の架橋」をBGMに、選手は手をつなぎ、涙を流しながら走った。

広島坂倉、DeNA桜井ら50人以上のOBが激励。終了後、マウンドに集まると、人さし指で天を差し、雄たけびを上げた。小倉全由監督(61)は目を潤ませ選手をたたえた。

辺りが真っ暗な午前5時過ぎ、ナインが寮の食堂に集まり始めた。みそ汁をすすり終えると、ウオーミングアップが始まった。今年も14日から28日までの15日間行われたが、小倉監督、三木部長は15日午後から26日まで東京都選抜のキューバ遠征で不在。その間、朝練は控えたが、夜間の素振りまで汗を流した。

合宿を通じ、心と体を強化する。小倉監督も現役時に、合宿で成長を実感した1人だ。「練習を目いっぱいやって『強くなった』と自信に変わった」。合宿中は日記を交換し、初日は「寝るのが怖い」と話した選手が、練習が佳境を迎えると一変。「無理するな」と止めても「やらせてください」と涙で懇願する。乗り越えた自信が土壇場の勝負に生きる。

年を重ね、指揮官の心も練習も変化した。関東第一時代は自ら走って、遅れた選手に「何やってんだ!」と怒鳴ったが、今は「大丈夫か?」と声を掛ける。「若い時は、年を取ったら何の心配もないんだろうと思ったけど、逆に増えた」と苦笑した。座右の銘は「練習はうそをつかない」。周囲も認める「日本一の練習」を垣間見た。【久保賢吾】

◆日大三・冬の強化合宿(ある日の1日の流れ)

05:00 起床

05:30 室内練習場でウオーミングアップ

06:00 12分間走

06:30 ジャンプトレーニング

07:00 ダッシュ(約1時間)

08:30 朝食

09:00 寮の清掃

10:00 打撃練習

12:00 昼食

13:00 打撃練習

14:00 補食

14:30 ノック

18:30 夕食

19:30 素振り(約1時間)

21:30 就寝