「新時代」を感じさせる衝撃だ。今秋ドラフトの目玉、大船渡(岩手)・佐々木朗希投手(3年)が3月31日、栃木・矢板市内での作新学院(栃木)との練習試合に今季初登板。自己最速にあと1キロと迫る156キロをマークし、3回6奪三振とねじ伏せた。日米18球団45人のスカウト陣は大興奮した。昨夏の高校野球100回大会で、日刊スポーツの「編成部長」として全国の球児をチェックした前ロッテのサブロー氏(42)も、投手大谷(エンゼルス)を超える新怪物と賛辞を贈った。

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3月の終わりに、ついに佐々木が目覚めた。「早く投げたくて、ずっと我慢していた。久しぶりの投球で楽しかったです」。調整登板のはずが、アドレナリンが止まらない。3回1安打6奪三振、名門・作新学院を圧倒した。

今年の実戦第1球は146キロ。それが投じた直球19球で一番遅かった。2回には156キロをマークし、直球の平均球速は驚異の150・9キロ。佐々木は「基本的に8割の力でした」と振り返るから末恐ろしい。及川恵介捕手(3年)も「7割の出来だと思います」と涼しい顔で同意した。1失点は自らのトンネルで喫したものだった。

2回は先頭打者に三塁打を浴びるも、そこから3者連続空振り三振。チェンジアップ、速球、スライダーと決め球を全て変え「大人の投球をしました」とニヤリ。スピードはあっても直球一本やりにせず、センバツで星稜(石川)奥川恭伸投手(3年)が掲げた「大人の投球」を、言葉でも内容でもまねした。

奥川、横浜(神奈川)及川雅貴投手、創志学園(岡山)西純矢投手(いずれも3年)とともに「高校四天王」と呼ばれる。佐々木だけ甲子園未出場。初視察のスカウトも多く、興奮もすごい。巨人長谷川スカウト部長は「衝撃を受けた。(マウンドと本塁の間が)18・44メートルじゃなく、14メートルくらいに見えた。直球のキレは今プロに入っても3本の指に入るのでは。本当にびっくりした」。ファン、保護者、スカウト、報道陣…。立場に関係なく言葉を交わし合いたくなるスタンドの高揚感を生み出した。

地元の仲間と甲子園を夢見て成長した。「岩手では公立校が長い間、甲子園に出ていない。勝って、もう1回新しい時代を作りたい。頑張れば勝てる、それを地元の子どもたちに見せたい」。3月に156キロという規格外の投球で新時代を切り開く。【金子真仁】