春季高校野球山形県大会(17日開幕)の組み合わせ抽選会が10日、山形市内で行われた。平成初となった89年の甲子園に出場した東海大山形が、令和最初も聖地に立つために、春制覇で勢いをつけるつもりだ。85年夏の初戦でPL学園(大阪)に7-29と歴史的大敗を喫した昭和の悔しさを晴らすためにも、4番でエース右腕の畑中悠哉(2年)を中心に古豪復活を期す。1回戦では酒田東との対戦が決定。上位3校は東北大会(6月6日開幕、山形)出場権を獲得する。

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令和初タイトル獲得で、生まれ変わるぞ! 2年生ながら4番の重責を担い、登板以外は内外野どこでも守るオールラウンダー畑中が言い切った。「自分たちで歴史を変えたい。山形の名門として『昔は強かった』と言われるのは悔しい」。04年春を最後に遠ざかっている聖地。夏は95年までさかのぼる。01年に山形・東根市で生まれたエースにとって、縦縞「Tokai」ユニホームが躍動する姿は記憶に薄い。

テレビ番組「アメトーーク」の高校野球好き芸人特集で、85年夏の悔しさを知った。初戦の2回戦で桑田、清原擁するPL学園に32安打を許して7-29。「山形県、東海大山形は弱いというイメージが昔の人には強いと思う。『東海大山形は変わったな』と言ってもらえるように甲子園でやり返したい」。昭和の負の歴史を、平成に払拭(ふっしょく)することは出来なかったが、新時代初年度のリベンジに挑む。

学校、OBら、関わる周囲も気持ちも支援する。昨年8月、OBの寄付金などによって校内に野球部寮が完成した。東海大野球部出身の武田宅矢監督(40)の先輩でもある巨人原辰徳監督(60)が「夢進館(むしんかん)」と命名。直筆の寮札も設置された。“大先輩”の思いに士気を高めただけでなく、寮生は早朝や夜も練習に励むことも可能になった。近隣市町村の生徒だけでなく、他県の好選手も安心して入学できる環境が整ったことも大きい。

畑中は武田監督の自宅で下宿を継続している。洗濯などの身の回りだけでなく、時には料理など監督夫人の手伝いも行う。「親の有り難み、支えていただいている方への感謝。恩返しの気持ちが甲子園出場しかない」。今冬の走り込みの成果は体重約10キロ増。打球の飛距離アップに加え、連投の体力面も不安は消えた。

昨夏代表の羽黒、宿敵関係を築いていた日大山形が近年に全国4強を経験するなど、高いレベルでの混戦が繰り広げられている。「夏に向けて、春は東北大会に行きたいし、シード権をとりたい」。投打で「Tokai」新時代を切り開く。【鎌田直秀】