不安な空気を振り払い、宇都宮工(栃木)が勝利した。試合前のシートノック。内野手から捕手への送球がそれ、大森一之監督(52)の右側頭部を直撃した。グラウンドに倒れ込み救急車で搬送。突然のアクシデントに選手の動揺が心配されたが、宇賀神聖主将(3年)が気迫の一打で流れを呼び込んだ。

無安打で迎えた6回2死二塁。「甘い球がきたので打ちたかった」と振り抜いた打球がファウルとなった。思わず打席でほえ、悔しがった。そして7球目。再び思い切り振り、執念の適時二塁打を決めた。この1本が打線に着火。3回まで無得点に抑えられていたのがウソのように勢いづき、7-0の快勝につなげた。

宇賀神は「監督がいてもいなくてもやることは同じ。今日も野球が楽しかったです」と言った。不謹慎にも思えるが、そうではない。これまで大森監督は「宇賀神はどんな状況でも、笑顔で野球を楽しめる。野球大好き人間」と評していた。その言葉通りのプレーで、監督不在のチームを鼓舞した。

大森監督は診断の結果、打撲と脳振とうで、脳に異常はなかった。監督復帰後も、“楽しい”野球で白星を目指す。【佐藤勝亮】