スーパーラウンド白星発進の決勝点は、3番韮沢雄也内野手(3年=花咲徳栄)がセンター前にしぶとく転がして、たたき出した。

相手失策で同点に追いついた5回無死二、三塁。1回、3回の打席はチャンスに惜しい当たりで凡退していた。打席に立つ前に永田監督や仲井ヘッドコーチから「当てに行くな!」「理屈抜きで!」と大声が飛んだ。「強い気持ちで打席に立ちました」と韮沢。ファーストストライクの速球に力負けせず、しっかり振り抜いた。

フルスイングしなくても外野の間を抜けさせる技術がある。花咲徳栄では冬の間、重さ1・2キロのバットを振り続けた。木製バットへの対応は、プロ野球のスカウト陣からも好評価を得ている。

今大会は遠藤にミットを借り、不慣れな一塁守備につく。「一塁手はあまり動かないイメージがあったんですが、バント処理とか想像以上に難しくて」。ここまで動きのミスもあったが、ショートバウンド捕球などは無難にこなしている。

「慣れない分、声を出していかないと」と、1球1球に声を出し、打球に備える。もともとは闘志を前面に出すタイプではない。目立ちたがり屋でもない。大会の公式SNSでは、勝利チームの選手たちの集合写真を「自撮り」で撮るが、いつも出遅れる韮沢はほとんど見切れている。

それでも、最近は一部ナインから「ジェームス」と呼ばれ、ベンチで存在感を増し始めた。花咲徳栄の先輩・野村佑希内野手(現日本ハム)は米国生まれ。そのミドルネームがジェームスであることに由来し、韮沢もいつの間にか呼ばれ始めたという。

6日の韓国戦に向けて「日本を背負って、責任を持って、日本らしい野球をしたい」と意気込んだ韮沢。殊勲打を打ったこの日もSNS動画に出遅れてしまったが、残りわずかな期間もグラウンドではしっかり存在感を見せるつもりだ。