日大三、東海大菅生、関東一、帝京が集結した激戦区の“ヤマ”は、26日に帝京が関東第一を下し、この日、日大三が東海大菅生に競り勝った。4強をかける帝京-日大三の好カードは11月3日に神宮第2球場で行われる。

8回に星憂芽外野手(1年)の起死回生の走者一掃逆転3点適時三塁打で5-4と試合をひっくり返し、東海大菅生にその裏にしぶとく追いつかれると、9回表に主軸の柳舘憲吾内野手(2年)が決勝の2点適時打を放った。最後は先発・左腕児玉悠紀投手(2年)から柳舘へ継投し、粘る東海大菅生を3者凡退に抑えて勝ちきった。

序盤から点の奪い合いとなった接戦を制した小倉全由監督(62)は試合後も興奮冷めやらぬ様子。報道陣に対しても熱い口調で試合を振り返った。「菅生さんがいいチームをつくって来て、こちらは必死に食らい付くだけだった。(都大会の)1回戦、2回戦は貧打だったが、『強いチーム相手にここでやらなければ成長できない』と、選手に言って試合に臨んだ。よく食らい付いてくれた」。

特に主将の渡辺凌矢外野手(2年)のトップバッターとしての打撃を評価し「試合が始まった最初の打席で自分のスイングをしなければ、チームのトップバッターは務まらない。そういう点で今日の渡辺はいい働きでした」。初回に二塁打で出塁し先制のホームを踏んでおり、5打席で3安打2死球。全打席で出塁した内容をたたえた。

これで11月3日は4強をかけて帝京とぶつかる。同じ東京でしのぎを削ってきた前田三夫監督(70)と、東京五輪後に解体される神宮第2球場最後の試合を戦う。そんな背景をかみしめながら、小倉監督は闘志を秘めつつ、静かな口調で「前田さんに痛めつけられて鍛えられ、その前田さんの帝京を破って甲子園に行って成長させてもらった。その前田さんと最後の神宮第2で試合ができる。そういう星の下に生まれたのかなと思いますね」と言った。

小倉監督が関東第一の監督時代から、帝京の前田監督は常に目の前に立ちふさがる壁だった。「2年連続で決勝で負けたこともあったし、春の東京大会決勝でスクイズで1点差で敗れたこともありました」。帝京との戦いが小倉監督の歴史の中で大きな試練だったと振り返った。そして、神宮第2球場で前田監督の帝京と戦った思い出として「関東第一の監督時代の昭和56年だったと思います。秋に前田さんに勝った試合は覚えています」と、懐かしそうに振り返った。

今大会の帝京は小松涼馬二塁手(2年)が猛打をふるう。関東第一戦でも6打点を挙げている。昨年暮れの東京選抜チームとして前田監督、小倉コーチ体制でキューバ遠征した際、小松は選抜メンバーとして同行していたホープ。指導もした小松を、選抜出場をかけた大切な準々決勝で敵として迎え撃つ。小倉監督は「打ってるんですよね、小松は。電話しとこうかな、試合前に。『キューバ遠征に言った仲だろう』って」と言って、楽しそうに笑った。

前田監督も、小倉監督も監督生活として残された時間は少なくなってきている。しかし、もう1度、あと1回、飽くなき甲子園出場への熱い気持ちは、なえることを知らない。62歳小倉監督と、70歳前田監督。両雄が神宮第2球場のフィナーレを飾る。