第50回記念明治神宮野球大会(神宮)が15日に開幕する。高校の部では、秋季東北大会を制した仙台育英(東北・宮城)が3年ぶり7度目の出場。「挑む! 日本一からの招待」と題し、今日と来週の2度にわたり、選手らが定めた4大大会(明治神宮大会、センバツ、選手権、国体)完全制覇を達成するための取り組みや、思いに迫る。第1回は、主将の田中祥都内野手(2年)を中心とした意識改革に注目だ。【取材・構成=鎌田直秀】

新しい仙台育英をつくってほしい-。田中は、野球ノートによる1、2年生の投票結果などで須江航監督(36)から主将に任命され、最初に伝えられた言葉を深く受け止めた。「まず、みんなで4大大会制覇を目標に定めました。それに見合った勝利を重ねるには、どうしたら良いのか」。3年生から受け継いだ終盤3回の強さ。自身はスタンドから見つめた甲子園8強の経験者も残る中、全員とコミュニケーションを取ることから歩みを始めた。

同学年とは登校時や授業間の休み時間に対話を増やした。1年生とは寮やグラウンドで、各人の考えを吸い上げた。「今では練習のこと以外でも、選手間で誰とでも意見交換が出来るようになってきた」。選手の気持ちの浮き沈みなども敏感に感じ取って、的確な声がけも出来るようになった。本音が飛び交う好環境が構築されつつある。

1つの新たな試みは、校外活動を選手たちで提案した。昨冬には仙台駅周辺で東日本大震災復興に向けた募金活動に参加。先月の台風19号では、甚大な被害を受けた大崎市の鹿島台地区に出向き、浸水した家具などを運び出すボランティア活動も積極的に行った。「落ち葉を拾うような簡単な意識から始まった。野球だけやってればいいという感覚ではダメ。誰かのためにという思いが、強さにつながる」と信じている。

今夏の甲子園は星稜(石川)に1-17、秋の茨城国体でも関東第一(東京)に2-10と大敗した。「全国で絶対に勝っていかないといけないチームを分析し、書いて張っています」。現在、室内練習場の壁には星稜以外にも大阪桐蔭、履正社(ともに大阪)、東海大相模(神奈川)、中京大中京(愛知)の戦力分析を掲示。「見ると気合が入ります」。超える敵も明確となっている。

16日には関西王者の天理(近畿・奈良)との初戦を迎える。東北大会後はレギュラーも白紙に戻した。チームを3分割して攻守ともに練習し、競争心も激しさを増している。「センバツに向けた課題を見つけることも大事ですが、勝って反省することが一番良い」。7年ぶり2度目の神宮制覇を通過点にするつもりだ。