「勝って終わるのは気持ちいいです」。舞岡・長野宏翔主将(3年)は、高校最後の試合を勝利で飾り、満面の笑みを見せた。いつもの年なら甲子園の優勝校しか経験できない「勝って終わる」高校生活。舞岡ナインはその貴重な味をかみしめた。

夏の甲子園が中止となり、各都道府県は代替大会を開催。神奈川でも、県ナンバーワンを決めるトーナメントが行われている。しかし、舞岡と足柄の2校は、トーナメントに参加せず、代替大会を1試合のみ戦う決断をした。

長野主将は「この先の進路もあるのでこういう結果になった」と説明する。大学進学を希望する選手は、AO入試やオープンキャンパスなどが8月に重なる。就職を選択する選手も就職試験と試合が重なり、全員がそろわない可能性もあった。新型コロナウイルス感染拡大による自粛期間の影響で、満足な練習もできなかった。「勝って楽しく終わろう」。最後の1試合にすべてを出し切る選択をした。

独自大会の開催に至り、神奈川県高野連は各校にアンケートを送った。「トーナメントに参加する」、「1試合のみ参加する」、「不参加」の3つの選択肢があった。長野主将はマネジャーを含めた部員9人全員に電話をかけた。「1試合のみ」を選択する者が大半だった。「結果はどうであれ、最後まで楽しんでいこうと声をかけました」。すべてを出し切る気持ちで試合に臨んだ。

試合は3度追いつかれたが、その度に突き放し続けた。長野主将は「まだまだ回はあるので、打って点を取って返していこうと思った。ベンチも今までの中で一番声が出ていた試合でした」。4番遊撃の主将は4打数3安打でチームの勝利に貢献した。米大統領が「野球で最も面白いゲームスコア」と言ったとされる8-7のルーズベルトゲームだった。

試合後は晴れやかな表情で記者たちの質問に答えていたが、最後に「ホームランを打てなくて残念でしたけど」とポツリ。高校生らしいあどけなさの残る笑顔も見せた。

舞岡ナインと同様、足柄も3年生選手7人と2人のマネジャー全員で試合に臨むため、この1試合を選択した。エース大森一輝(3年)は「最後まで投げたいと思っていました」と涙を拭った。打たれても、左股関節がつっても、マウンドに残り続けた。157球の熱投。気持ちで投げ抜いた。

「自分のせいで点を取られたので、取り返す気持ちで打席に入りました」。大森は4打数3安打1打点と執念を見せた。大学では野球はしない。これが野球人生最後の公式戦となった。「単純に楽しかったです。今日みたいに最後まで追い込む気持ちを忘れずにいきたいです」と前を向いた。

両校1試合だけの最後の夏。舞岡・長野主将は「同じ選択をした仲間。一緒にやれて良かったです」と対戦相手にエール。足柄・長谷川駿将(しゅんすけ)主将(3年)は「最後までやり抜けたことは誇らしいことです」と胸を張った。この日の1戦をかけがえのない財産として、それぞれの未来を歩んでいく。【湯本勝大】