<高校野球神奈川大会:相洋9-6星槎国際湘南>◇22日◇準決勝◇横浜スタジアム

試合の裏に、高校野球ならではのドラマがあります。「心の栄冠」と題し、随時紹介します。

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父の願いは通じた。相洋の2回の攻撃。鈴木心晴外野手(3年)が「少しボールだったけど、完璧でした」と勝ち越し3ランを放った。カウント3-1から高め直球に振り負けず、ライナーで右翼へ一直線。この回7得点で、決勝進出を決めた。

「心晴(しんせい)」の名には「周りの人の心を晴れやかにする人間に」という両親の思いが込められている。父慶一さんは今年3月、がんで亡くなった。60歳だった。「再発してしまいました。センバツには間に合わないと聞いてましたが、プレーで元気づけられたらと。今日も一番近くで見てくれたと思います」と真っすぐ前を見て言った。

ここ3試合無安打だったが、この日は3ランを含む4安打。星槎国際湘南との点の取り合いで大きな仕事をした。「今日は力が抜けて体が軽いなと。ここぞで回ってくると信じてました」と胸を張った。不振でも1番から外さなかった高橋伸明監督(35)は「一番努力している選手。認めてあげたかった」。そう話す顔は晴れやかだった。チームメートも笑顔いっぱい。決勝を戦う東海大相模は、鈴木にとって入学以来3連敗中の相手だ。「相模を倒して優勝したい」。頂点に立って、みんなをもっと晴れやかにする。【古川真弥】