センバツ21世紀枠に選ばれ、8月の甲子園交流試合に出場した磐城が、5-4でいわき光洋に競り勝ち、新チームの初公式戦を白星で飾った。

エース佐藤綾哉(りょうや)主将(2年)が9四死球と苦しみながらも、2安打4失点で完投。甲子園での経験を財産に、聖地での勝利を目指す新チームが船出した。夏の東北王者の聖光学院は6-2で福島を退け、2年ぶりの秋白星を挙げた。

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最後は主将の、そしてエースの意地だった。5-2で迎えた9回裏1死、磐城・佐藤綾主将は突如制球を乱し、4連続四死球で1点差に迫られた。8回から右足ふくらはぎをつっていたが、表に出さなかった。167球目の直球で、いわき光洋・青木真那斗主将(2年)を左飛に仕留めると、プレッシャーから解放されたかのように、派手なガッツポーズでほえた。

甲子園に立ったのは2年生7人、1年生1人。ベンチに入れなかった1年生10人も、チームに帯同し空気を共有した。プレーした者、出場できなかった者、スタンドから見つめた者、それぞれがかけがえのない経験を持ち帰った。交流試合では無死満塁で併殺に倒れた首藤瑛太内野手(2年)は、初回にきっちり先制犠飛。3回にも適時打と、早速チャンスで結果を出した。国士舘(東京)に3-4で惜敗した責任を痛感し、勝負強さを自分に課した。「甲子園でああいう試合をした先輩たちにも、今後の磐城にとっても恥ずかしい試合はできない」。打撃に課題があった8番の鈴木隆太内野手(2年)は、6回に本人もびっくりの大会1号本塁打を放った。新チームでの練習試合は3試合と実戦不足が懸念されていたが、聖地での1試合が、選手の経験値を高めていた

佐藤綾主将は甲子園の一塁側ブルペンで準備を続けたが、最後まで出番はやってこなかった。本調子と言えないながらも、巧みな投球術で最後までエースとしてマウンドを守った沖政宗投手(3年)の姿を目に焼き付けた。新チームの目標はずばり「甲子園で勝つこと」。そのためには「甲子園と同じような雰囲気を、どの球場でもどんな試合でも作らないといけない」と話す。聖地での経験を強みに磐城が新たな1歩を踏み出した。【野上伸悟】