先発した神戸国際大付(兵庫)のエース阪上翔也投手(3年)は2回途中での降板を悔しがった。試合前から右肘に少し違和感があったものの「全部自分で投げるつもりだった」と、初回は142キロの速球などで3三振を奪った。だが、2回に先頭打者に安打されると、四球と安打で2死満塁のピンチを迎える。「思った球も投げられなくなった」。ここで青木尚龍監督(56)が左腕の楠本晴紀投手(2年)にスイッチ。阪上はセンターへ。昨秋の近畿大会で右肘炎症を起こし、約1カ月半投球しなかった時期もあり、その影響があった可能性がある。肘の状態を指揮官に言い出せなかった阪上は、降板について「たぶん監督が(異変を)感じ取ったからだと思う」と振り返った。

楠本は押し出し四球で1点を先制されたが、その後は持ち直した。マウンドを譲った阪上は打撃で貢献。6回に投手内野安打で同点に追い付く好機を演出。10回にも死球で出塁してサヨナラ勝ちにつなげた。

阪上の祖母・平松千恵子さんは、昨年12月に74歳で亡くなった。中学時代に兵庫から和歌山に引っ越し、祖父母宅から通学し、祖父弘次さん(77)が監督を務めるヤングリーグ「打田タイガース」(現打田ヤングタイガース)でプレーした。多感な時期に3年間、親身に世話をしてくれた祖母に、センバツでの晴れ姿を見せたかった。千恵子さんの好きな言葉「らしく」。阪上はグラブに「自分らしく」と刺しゅうを入れている。「センバツを楽しみにしていたと思うので、おばあちゃんの分まで頑張ろうと。活躍を見せたかったけど思うような投球ができなかった」と悔やんだが、亡き母に思いを伝える機会はまだある。「次の試合は自分らしい投球をして圧倒して勝ちたい」と次戦での活躍を誓った。【高垣誠】