第103回全国高校野球選手権(8月9日開幕、甲子園)の道内各地区予選が26日、南北海道・札幌、室蘭で開幕する。昨年12月にばんえい競馬でデビューした金田利貴騎手(23)は、白樺学園の控え捕手として15年夏の甲子園を経験。ばんえい競馬界のホープが、2年ぶり開催の夏甲子園を目指す球児たちに、熱いエールを送った。【取材・永野高輔】

   ◇   ◇   ◇

金田騎手は、夢中でボール追いかけていた当時を思い返した。絶対に気持ちで負けるな。その思いを伝えたかった。

金田 去年の3年生は、いろいろなことを受け止めて我慢した世代。今の3年生には、そういう素晴らしい先輩たちの思いを背負って戦ってほしい。負けたら終わり。戦いが始まるんだという気持ちで臨んでくれたら。甲子園では自分は試合に出られず“敗者”だったから、今は絶対に負けたくないという思いで騎手をやっている。僕も負けたくないけど、球児のみんなにも負けてほしくない。そして勝つには、いろんなことを考えること。

背番号12で臨んだ15年夏の甲子園は、控え捕手として投球練習のわずかな時間だったが、聖地を体感。代打要員として準備も、試合での出番はなかった。

金田 自分は最後の夏、1度も出られなかったが、代打の1番手というプライドを持って、いつも相手投手の研究をしていた。出たら必ず流れを変えてやるって。ベンチスタートの選手には、いつでもいけるという準備を持っていてほしい。スタメンの選手は、常に準備をしているが、ベンチの選手は少し薄れがち。ベンチのみんなも全員で戦う姿勢を整えてほしい。

思い出の凝縮された高校3年間だった。14年11月に同じ野球部員の渡部光稀さん(当時2年)がアルバイト先の農作業中に事故死。15年夏の甲子園は「光稀の分まで」と、一丸でつかんだ聖地への切符だった。

金田 光稀とは同じ自宅通学生で、帰り道に何度も一緒にご飯を食べた。亡くなったときは本当にショックだった。そんなときもチームにいた光稀の弟が練習を頑張っている姿を見て、思った。いつも通りやっているだけじゃだめなんだと。それはチームのみんながそうだった。悲しいこともあったけど、中身の濃い、充実した3年間だった。

高校時代のチームメート河村説人投手(24)は今季、星槎道都大からドラフト4位でロッテ入り。仲間の活躍は、刺激になっている。

金田 ドラフト会議を自宅でテレビで見ていて涙が出そうになった。今では自分もプロの騎手。畑は違うが同じ勝負の世界に身を置く者として負けられない。

19年12月31日に第1子となる長男が誕生。昨年12月にデビューし、今季すでに17勝で勝利数ランキング10位(24日現在)と活躍中だ。11年島津新以来となる日本プロスポーツ大賞新人賞、NARグランプリ優秀新人騎手賞候補としても注目される。

金田 子どもが自分の仕事を分かってくれるころまでに一線級の騎手になりたい。新人賞も取って、そういうことで、ばんえい競馬を広く知ってもらえたら。

自身にもムチを入れ、球児に負けじと、高みを目指す。

◆金田利貴(かねた・りき)1998年(平10)1月15日、帯広市生まれ。帯広緑ケ丘小2年時に緑ケ丘キングファイターズで野球を始める。白樺学園では2年秋からベンチ入りし、3年春の全道大会出場。卒業後は札幌大に進学し、野球を続けるも18年9月に中退。調教師の父勇さんのもとで厩務員となり、2度目の騎手試験で合格。初騎乗は20年12月12日、同13日に8戦目で初勝利。昨年度は268戦39勝で、ばんえいアワード2020特別賞を受賞した。