巻が新井に延長11回、3-2でサヨナラ勝ちした。2-2の延長11回1死満塁にアルバニア人のバロリ・ブレアルブ一塁手(3年)が初球スクイズで16強入りを決めた。

悔しい思いが、バロリに研ぎ澄まされた集中力をもたらした。2-2の延長11回1死満塁。前の打者・5番渡辺優捕手(3年)が申告敬遠で歩き、塁が埋まった状況で打席を迎えた。「(前打者の)申告敬遠は(9回に続き)2回目。怒りも込みあげてきた」。そんな思いで投球に食らいついた。初球だ。外角直球を長いリーチを生かしてバントした。両手と右膝を地面についてから一塁に懸命に走った。ここまで5打席無安打だった一塁手が、延長サヨナラになるスクイズバントを決めてみせた。

「ホッとした。うれしい」。サヨナラスクイズを決め、一塁付近で一塁コーチの小林優月(3年)と抱き合って喜んだバロリは、そう話した。3回2死一、三塁。5回2死二塁。7回1死一、二塁。9回は2死二塁で前打者が申告敬遠。何度も得点圏に走者を置きながら打席に立ったものの、バットから快音は聞こえなかった。だからこそ、試合を決めた6打席目の小技成功はうれしかった。「一番大事な場面で決められた」と笑顔で言った。

両親ともアルバニア人で、アルバニア国籍ながら日本生まれの日本育ち。サッカー大好き少年だったバロリは五十嵐小3年の時にハードオフ新潟で観戦したプロ野球、DeNA-巨人戦で野球の魅力にはまった。五十嵐ファイターズに入団して以後、野球一筋。勝見邦弘監督(54)は「チャンスに時々、打つので期待していた」と評したが、この日はバントで存在感を見せた。延長サヨナラ勝ちで沸く巻のロッカールームではチームメートに「アルバニアの星」と祝福されていた。【涌井幹雄】