19年夏の甲子園準優勝の星稜(石川)に続き、今春センバツ優勝の東海大相模も新型コロナウイルスが原因で甲子園への道を断たれた。強豪校だけではない。この夏、全国で出場辞退の学校が出ている。戦わずして夢破れた選手、指導者、関係者の無念は、強豪であるかどうかとは関係ない。とはいえ、センバツ優勝校の辞退だけに、衝撃が大きいのも事実。「何とかならないのか」と思わずにいられない。

一方で、米子松蔭(鳥取)の辞退による不戦敗が取り消された。SNSから広まった世論の後押しがあったとはいえ、当初のルールを柔軟に運用する前例ができたことは良かった。日本高野連は、今夏の甲子園では、仮に出場校から陽性者が出ても、集団感染でなければ即座に参加取りやめとはせず、チーム初戦までは当該選手の入れ替えなどで対応するとしている。米子松蔭のケースが、考えを前進させたとみる。

だからこそ、今回の一連の悲劇を無駄にして欲しくない。記しておきたいことがある。実は、茨城県高野連は今夏大会前、登録メンバーを従来の20人から30人に増やし、ベンチ入りメンバー20人に陽性者や濃厚接触者が出た場合に限り、残りの10人と入れ替え可能とする救済措置を表明した。ところが、甲子園を目指す大会は全国統一ルールで行われるべきという異論もあり、最終的には撤回せざるを得なくなった。

選手層の厚い、薄いによる不公平感への懸念もあったとみられる。だが、そうだとすれば、公平性の確保とコロナによる出場辞退防止と、どちらを優先するのか、という話になる。個人的には絶対に後者を優先したいし、感染状況やハード面など地域の実情に即していかないと、コロナ禍での大会運営はより困難を増すだろう。“茨城方式”なら、既に起きてしまった出場辞退の多くは避けられていたのではないか。今夏の甲子園でも適用していい。

経営者が強いリーダーシップを持つプロスポーツとは異なる。柔軟なルール解釈や運営は、高校野球に限らず、あらゆるアマスポーツにこそ必要だ。ルールは人が作る。そのルールを、適用するのも人。全ては、懸命に練習してきた選手のためにありたい。【アマチュア野球担当=古川真弥】