歴史に残る今大会1号が飛び出した。横浜(神奈川)が、大会史上初となる1年生サヨナラ弾で、3年ぶりの夏初戦突破を果たした。

2点を追う9回2死一、三塁、緒方漣内野手(1年)が左翼へ逆転の3ラン本塁打を放った。劇的な幕切れを呼び込んだ1発は、緒方にとっても公式戦初本塁打。「強豪横浜復活」を目指す今年の横浜。1年生の一振りで、甲子園に新しい横浜を強烈に印象づけた。

横浜の夏を終わらせない-。1年生の一振りがチームを救った。9回2死一、三塁。打席に入る緒方はニコリと笑った。「自分ができることをやるだけ。おどおどしない」。心は冷静だった。「ボールの内側をしっかりたたく」。自分のスタイルを貫き、直球をコンパクトに振り抜いた。一塁を回って「入ってくれ!」とつぶやくと、願いを乗せた打球は左翼スタンドに吸い込まれた。「頭が真っ白になって…すごくうれしかった。人生で一番いい当たりでした」。先輩たちにもみくちゃにされ、初々しい笑顔が甲子園にはじけた。

打撃フォームを改造し、1番に定着した。春の県大会からレギュラーに抜てきされたが結果を残せず、村田浩明監督(35)のアドバイスでコンパクトなフォームに。「中学では長打を打ちたかった。その我を捨てて打てるようになった」。速いスイングで内からバットを出す。監督が付き切りで打撃投手を務め磨いた。

3歳で買ってもらった子ども用のグラブは寝る時も肌身離さず、遊びはいつも壁当てだった。「祖父や父が仕事から帰ってくるのを待ち構えて、野球の相手をねだったのを覚えています」。大好きな野球。大舞台になるほど意気に感じる。

強い横浜復活へ。昨年4月、村田監督が就任すると、チーム一丸、礼儀やあいさつ、掃除からチーム改革を進めてきた。私生活から徹底し粘り強さを身に付けた。1年生の劇的な逆転3ラン本塁打で新生・横浜を強烈にアピール。3年ぶりの夏の夏1勝。新たな横浜の歴史が始まった。【保坂淑子】

 

◆緒方漣(おがた・れん)2005年(平17)6月20日生まれ、神奈川県川崎市出身。5歳から大島三丁目子ども会野球部で野球を始め、小4から元宮ファイターズ、中学はオセアン横浜ヤングでプレー。中3でヤングリーググランドチャンピオン大会で全国優勝。横浜では1年春からレギュラー。167センチ、62キロ。右投げ右打ち。家族は両親と兄、姉。

 

横浜・村田監督 (緒方について)「1番にこだわって練習してくれた。動じない性格。正直、最後は緒方がやってくれるのではないかと思っていた」