女子高校球児が、やっとたどり着いた聖地。「ナックル姫」の愛称で、女子野球界の先駆者として知られる吉田えり投手(29)も、特別な思いでこの日を迎えた。現在は栃木県に本拠を置く18年創部のエイジェック女子硬式野球部のコーチを兼任する。今年8月には、全日本女子硬式野球選手権大会(愛媛・松山)で初優勝。女子野球の過去と現在、そして未来を語った。

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今まで、甲子園のグラウンドに立てなかった女の子たちが野球ができたということで1歩、前進できたのかなと思います。見ていると楽しそう。仲間で1つの目標に向かってがんばれるのは、いいですよね。

甲子園は憧れの特別な場所です。高校生の時、少しだけ(川崎北の)野球部に入り、甲子園で投げたい思いもありました。でも、そもそも女の子は公式戦に出られなくて、目指したくても目指せない。「なんでなんだろう?」という気持ちと、「女の子も甲子園を目指せたらいいのに」と思っていました。

すぐに、クラブチームに入りました。私はナックルボールを磨いて投手に専念したかったので、ひたすらナックルを投げました。ケガもありましたけど、結果的にはよかったのかなと思っています。

今年8月、高校生も大学生も出場する全日本女子硬式野球選手権大会で初優勝できました。初戦は履正社(大阪)と対戦(10-0で勝利)。高校生もいる他のクラブチームとも戦って、レベルが本当に高くなったなと、高校生強いなって、正直感じました。東京五輪で男子の野球が金メダルをとって、私も興奮しました。海外(米国)で野球をしてすごく成長させてもらったので、海外でも広がるといいなと思います。女子野球も一緒に(五輪に)出場できるのが理想ですよね。

最近は注目されていると感じます。昨年に西武、今年は阪神で女子チームができました。女子プロ野球がなくなって寂しいけど、少しずつ前進しています。だからこそ今、小学校や中学校、高校で頑張っている女の子たちは、諦めずに野球を続けてほしい。女子野球がどんどん大きくなると、私は感じています。まだ地方によっては選手が少ないので足を運んで、楽しさを伝えていきたいです。

◆吉田(よしだ)えり 1992年(平4)1月17日、神奈川県生まれ。小2で野球を始め、中川西中3年秋に硬式転向。川崎北高に進学し、09年は関西独立リーグ神戸入り。10、11年は米独立リーグのチコなどに所属。12年から関西独立リーグに復帰。再び米独立リーグのマウイを経て、13年8月からBC・石川。17年はBC・栃木。18年のエイジェック女子硬式野球部設立から携わり、現在は投手兼任コーチ。18年に結婚。156センチ。右投げ右打ち。