静かに、50年の監督生活に幕を下ろした。帝京の前田三夫監督(72)が29日、都内の同校グラウンドで、今夏で勇退したことを選手たちに伝えた。

白いTシャツ姿でグラウンドへ。午後2時開始の練習前に、選手を集めた。「監督として今年で50年。1つの節目ということで、この夏の大会をもって、監督は終了します。まだまだ君たちの指導をしなきゃいけないけども、人間には節目というものがある」。

さらりとした、優しい口調だった。これからは名誉監督という立場になる。「またユニホームは着ませんけれども、グラウンドに出来るだけ立って、これからも応援していきたいと思っています。私が監督のときに入った君たちは、最後まで面倒は見ます。しっかり見届けます」。選手たちは「ありがとうございました」と頭を下げ、アップに戻っていった。

秋季東京都大会(1次予選、9月4日~)から監督として指揮を執る金田優哉コーチ(36)は、同校2年時の02年夏の甲子園4強を経験。主将も務め、筑波大をへて母校に赴任した。前田氏は来年以降については「学校とも話して、来年以降の監督については、もう1度これから考えます」とした。

選手に伝え終わると、すっきりとした表情で言った。「くよくよしないで、スパッとね。さっぱり話そうと思っていました」。72年に就任し、89年夏にはエース吉岡を擁して甲子園初優勝。92年春、95年夏にも全国を制するなど甲子園通算51勝を誇る。「やっぱり、グラウンドの空気が好きです」。そう言うと、すぐに、アップする選手へ目線を送った。【保坂恭子】