星稜(石川)が天理(奈良)に30年前のリベンジを果たした。

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仕掛けたのは、同点の延長11回表2死一、三塁。一走の佐々木主将が塁を離れて、けん制を誘った。連動して三走津沢も動いたが、早すぎた。天理の一塁手川端が佐々木を見切って、津沢の挟殺を狙い、三塁に送球した。万事休すと思った瞬間、ボールは三塁手の頭上を越えた。勝ち越しの本塁を踏んだ津沢は「早く飛び出しすぎた。結果オーライでした」と言う。ボールがファウルゾーンに転がる間に佐々木も生還。決定的な2点を奪った。

重盗成功ではなく、敵失絡みだった。林和成監督(46)は「しまった、と思ったけど、相手ミスを誘えた。決勝点を取れて良かったです」。攻撃前の円陣で「俺は(13回以降の)タイブレークが嫌いだから」とハッパをかけ、選手をその気にさせていただけに、策が決まり? ホッと一息だ。

天理にリベンジを果たした。92年センバツ準々決勝で1-5。林監督は、1年先輩の元ヤンキース松井秀喜らと2番遊撃で出場し、2回表に1点先制、8回裏に5失点した。「スコアボードを見て“同じ展開だな”と思った。くしくも(同じ)8回裏に失点して」という指揮官は、30年前と違う結末を喜ぶ。

林監督が今大会を限りに勇退する。11年春に就任し、19年夏の甲子園は現ヤクルト奥川を擁して準優勝した指揮官のタクトを、ナインは楽しみたい。「監督さんと1試合でも多く試合をしたい。みんな、そう思ってます」と佐々木主将。天理との強豪対決を制し、星稜の特別な春が始まった。【加藤裕一】