<高校野球春季近畿大会:和歌山商0-9大阪桐蔭>◇22日◇1回戦◇和歌山・紀三井寺運動公園野球場

今春のセンバツを制した大阪桐蔭が公式戦の連勝を28に伸ばした。今秋ドラフト候補の松尾汐恩捕手(3年)が1回に場外の民家に飛び込む高校通算26号の先制2ランを放つなど、3安打でけん引。14安打9得点で和歌山商に7回コールド勝ちした。センバツ準優勝の近江(滋賀)はエース山田陽翔投手(3年)が6回1安打無失点と好投し、奈良大付を振り切った。両校は28日の準決勝で対決。センバツ決勝の再現となる。

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白球は軽々と左翼フェンスを越え、防球ネットも越え、民家に吸い込まれた。玄関フェンスを直撃…。これがドラフト候補の弾道だ。1回1死一塁。松尾は球速110キロ前後を強振して下手投げ右腕を沈めた。

先制2ランは豪快な場外アーチだが、松尾は「あんまり打球を見なくて…。打ったらすぐ走者に切り替える。打球を見ているスキがあったら走ります」と実にクール。高校通算26発目にも満足しない。4回は好走塁を見せ、3安打を放って公式戦28連勝に導いた。

センバツの頂点に立っても「一戦必勝」を貫く。府大会を優勝後は連日、横手投げ右腕を打ち込んで練習してきた。この日の下手投げ先発を想定し、周到に準備した。西谷浩一監督(52)も「すべてベースの上に来る。引きつけてベースの上でしっかり打とう」と助言。1回、ダイヤモンド1周を終えても松尾は悦に入らない。すぐ仲間に「極端なくらい上からたたけば打てる」と伝えた。連打が出て1点追加。情報伝達の徹底ぶりも同校の強みだろう。

紀三井寺の左翼場外弾は強打捕手の証しだ。昨年4月、現ロッテの市和歌山・松川が大アーチ。この日も多くの人が驚いた。オリックス谷口スカウトが「力を入れなくても飛んでいく印象」と舌を巻けば、DeNA安部スカウトも「スイングにキレがあり、インパクトの強さがある」と評する。近隣に住む女性も「30年近く住んでいて、ここまで飛ばすのは高校野球では記憶にない」と目を丸くした。次はセンバツ決勝で戦った近江戦。130メートル弾の衝撃は、甲子園春夏連覇への通過点に過ぎない。【酒井俊作】

▽大阪桐蔭・川原(先発で6回7奪三振無失点)「真っすぐの質、低めへの制球が今日の一番の収穫。ところどころ球が浮いたのは課題」