近江・山田陽翔(はると)投手(3年)が投打で偉業を達成した。打っては先発投手で史上11人目の満塁弾、投げては同13人目の甲子園通算10勝。チームを3季連続の8強に導いた。

4番打者の本能が、ついに目覚めた。2-1の7回2死満塁。山田に打席が回った。そこまで9奪三振と投球で相手をねじ伏せてきたエースが、今度は構えで海星エースの宮原を威圧する。カウント2ボールからの直球をフルスイングで捉えた打球は、左翼へ高々と舞い上がった。塁上の3人が一瞬でスタンドインを確信した豪弾。昨夏の準々決勝・神戸国際大付(兵庫)戦以来、自身甲子園2号のアーチに、山田はベンチで仲間と抱き合った。

山田の投球を受け続ける大橋は「最強です!」と声を弾ませ、多賀章仁監督(62)も「本当にすごい。持ってる男」と絶賛。だが、本人は「みんなが打たせてくれたホームランです」と周囲に感謝した。そんな山田を、近江高校の食堂運営に携わり入学当初から知る川岸隆二さん(49)は「礼儀正しくて気遣いできる子。でも、普段は甘えてきてくれる、人懐っこい子です」と話す。グラウンドを離れても、人を引きつけてやまないのが山田だ。

先制点を奪われても、仲間が取り戻す。山田を負け投手にするわけにはいかない、という周囲の思いがある。同点に追いつき、勝ち越してくれた味方に、山田も7回9奪三振1失点の力投で応えた。甲子園通算98イニング98奪三振で、ついに10勝投手の仲間入り。目標の日本一に、また力強く前進した。【竹本穂乃加】

◆満塁本塁打 近江・山田が記録。19年の今井秀輔(星稜)が仙台育英戦で放って以来53本目。滋賀県勢では11年の白石智英、遠藤和哉(ともに八幡商)以来3本目。