第95回選抜高校野球(18日開幕、甲子園)の組み合わせ抽選会が、10日に行われる。

時代とともに進化していく野球道具。今回は「バット」に焦点を当てる。1974年の導入からちょうど50年となる24年春に新基準の金属バットが導入される予定で、高校野球は大きく変わろうとしている。その転換期となる今大会を前に「快音」の歴史に迫った。

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バットは時代の流れで進化してきた。野球殿堂博物館には明治時代後半の木製バットが展示されている。全体は茶色く、ヘッド部分は黒い。グリップ部分も平らで非常に簡易的だ。

バットの歴史が動いたのは73年だった。日本の選抜チームがハワイ州選抜の金属バットを見て、「耐久性」の観点から導入を決めた。日本では材料不足などで折れやすい木製ものが問題視されていた時期だった。

74年センバツ後から正式に導入されたが、資金面の課題もあって急速には浸透しなかった。だが「やまびこ打線」が歴史を動かした。82年夏、名将として知られる蔦文也監督率いる池田(徳島)が金属バットを駆使した攻撃野球で優勝して広まったとされている。

金属バットの素材にはアルミニウムが使用されているが、野球殿堂博物館の関口貴広主任学芸員は「木製バットは時代によって原材料が変わってきている。資金面などもあると思うが高校野球界の金属バットも変わっていくかもしれない」と話す。低反発バットへの完全移行は1年後。今大会はバットの歴史が動く前の、最後のセンバツになる。【星夏穂】

◆高校野球と金属バットの歴史

1973年 ハワイとの親善試合で使用許可。日本がサンプルの持参を要請。

74年 春季地区都道府県大会から使用を許可。

82年 池田が「やまびこ打線」で6試合計85安打で優勝。甲子園総本塁打数が初めて30本を超える。

84年 飛距離が出る「試合専用バット」が登場。

86年 通産省から新検査基準が認定される。

90年 消音材のウレタンを抜いて打球音が響くようになり、捕手の聴力保護を目的に世界で初めて音響対策基準値が定められる。

91年 消音バット採用。

01年 秋季大会から重さ900グラム以下は使用禁止。

23年 高野連が24年春に安全面と投打のバランスの見直しで完全移行を決めた新基準の「低反発バット」を加盟校に2本ずつ配布すると発表。