つくば秀英(茨城)の最速143キロ右腕、エースの五十嵐大晟(たいせい)投手(3年)が、今春の悔しさをバネにチームを初の甲子園に導く。

2年生の春季県大会からベンチ入りし、同2回戦で公式戦初登板を飾った。3回戦の霞ケ浦戦では先発して7回を2失点と好投した。春秋通じて初の関東大会出場を決めた土浦日大戦、関東大会1回戦の作新学院(栃木)戦でも中継ぎで4イニングを投げるなど、一気に注目選手へと成長した。

今春から背番号1を託され、エースとしてさらなる活躍が期待されたが、「野球から離れたいと思いました」と苦悩するほど、大きな挫折を経験した。準々決勝の土浦日大戦で先発したが、3本塁打を含む9失点の大乱調で4回KOされた。「直球に力がなく、置きにいってしまった」。チームは1ー9の7回コールドで完敗し、2年連続の関東大会切符を逃し、「自分のせいで負けた」と涙を流した。

失意の五十嵐を救ったのは、エースを争うライバルでもある武蔵空良(そら)投手(3年)の言葉だった。「野球を続けてほしい。いつになっても応援している。諦めないで」と励まされたことで、グラウンドに立ち続けることができた。

夏の茨城制覇に向けて、直球の強化に着手する。球の握り方を見直し、ゴムチューブを使って肩の可動域を広げる練習に力を入れた。新球種の習得にも取り組んだ。練習試合で対戦した花咲徳栄(埼玉)の岩井隆監督(53)から、フォークを覚えたら投球の幅が広がるとアドバイスされ、猛練習。「1週間で試合で使えるようになりました」とみるみる上達し、「練習試合でも決め球として使えています」と手応えを口にした。

「土浦日大にリベンジして甲子園に出場することが目標」と闘志を燃やす。1度はどん底を味わったエースが、パワーアップした姿で雪辱のマウンドに立つ。【村山玄】