1年夏からプレ-イングマネジャーを務める前田樹マネジャー兼投手(3年)の熱意が、工学院大付(西東京)の野球を変えた。昨年2月から、投球の回転数や回転軸、縦横の変化量などを数値化できるデジタル機器「ラプソード」を導入。その裏には、チームを思う前田の努力があった。

YouTubeでラプソードの存在を知り、「感覚を数値化できれば効率的に技術を向上できるのでは」と考えてはみたものの、同機器は1台で約70万円という高級品。チームの状況や課題を20枚のスライドにまとめ、中野由章校長や理事長、父母会などを相手に機器の必要性をプレゼンすること7度。最初は「熱意が伝わらない」と突き返した中野校長も、最後は訴えを認めた。

導入後、エース右腕・大友伸晃投手(3年)は数値を参考にしながらリリース時の手首の角度や回転のかけ方を改善。「入学時は120キロだった球速が今年の4月には130キロになりました」と効果を実感している。前田自身も、最速が112キロから129キロにアップした。「自分が結果を出すことで選手のやる気につながれば」。1つの機器の導入で、選手たちの目の色が変わった。

西東京は17日に抽選が行われ、工学院大付は7月13日の初戦で東京都市大付と戦うことが決まった。前田は「チームの目標はベスト8。神宮に行きます」。データを味方に勝ち進み、8強に名乗りを上げる。【玉利朱音】