<高校野球奈良大会:高田商17-0奈良県大付>◇9日◇1回戦◇佐藤薬品スタジアム

高校野球のドラマは、勝った者にだけ生まれているわけではない。日刊スポーツでは今夏、随時連載「君がらんまん」で、勝者だけでなく敗者にもスポットを当てた物語をお届けする。

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夏の大会に初参加した奈良県大付は勝利を飾れなかった。初回に8四死球。ノーヒットで7点も取られた。早々と勝負あり。それでもベンチは試合が終わるまで声を切らさない。髪の長い選手の中で、丸刈りが目立つ大西悠生主将(2年)の目にも涙はなかった。

昨春に開校したばかりで、野球部の活動開始は昨夏から。創部メンバーの現2年生は8人。1年生が加わった4月から試合を組めるようになったが投手経験者はゼロ。公式戦初参加の春に続く大敗も無理はない。

学校の方針で、部活動の監督は外部指導員が務める。少年野球の指導歴が30年以上におよぶ寺井孝文監督(67)は午前で仕事を終えてからグラウンドに出向く。平日週3回だけの練習にスペースも限られている。

「こんな観客を前に試合をしたことはない。練習ではできていることも緊張してできない。速い球も見たことないから打てないですよね」と同監督は苦笑いしたが、成長も感じている。「この3カ月で選手には勝ちたい気持ちが出てきている。最高学年になる秋からは、意識が変わるでしょう」。同じメンバーで“始動”する新チームに期待を込めた。【柏原誠】

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