奈良商工エースの貝辻奏凪(そうな)投手(3年)はスタンドに一礼すると、その場で泣き崩れ、中野俊彦監督(61)と米田芽生マネジャー(2年)に抱えられてグラウンドを後にした。

9回で160球、右親指がつりながらも志願して投げ続けたのには、大好きだった祖父・岡本貞男さんとの約束があったから。貞男さんは60年の第34回センバツに高知のエース、4番として出場。貝辻は幼い頃から「おまえやったら甲子園に行ける」と励まされてきた。だが、貞男さんは昨秋に息を引き取った。母から知らせを受け、自転車で50分かけて帰宅して大阪に向かったが、間に合わなかった。祖父の形見としてもらったセンバツの記念品をこの日も握りしめていた。

祖父の他界と同時期、自身は腰を痛め、腰椎分離症と診断された。それでも「そんなの言い訳にならない」とマウンドに立ったこともあった。最後の夏、試合に敗れ「約束を果たせず悔しいです」と大粒の涙を流した右腕。中野監督は「負けん気、リーダーシップ、すべてが最高のキャプテン」と感謝した。

貝辻は「終盤は自信のある真っすぐで押していけたので良かったです。これだけいい仲間と(野球が)できて祖父も喜んでいると思います」と、最後は笑顔で天を見上げた。【村松万里子】

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