武蔵越生のエース右腕・大野敦士投手(2年)が完封勝利を挙げ、2回戦に駒を進めた。

新チーム発足後から取り組んできた新フォームでつかんだ公式戦初完封だった。昨夏甲子園V、今夏準VでU18日本代表にも選出された仙台育英・高橋煌稀投手(3年)をモデルにした。まずは黒色のグラブを顔の前にセット。左足を軽く後ろに振ってから、胸の高さまで高く上げるしなやかな「振り子投法」が美しい。試合後に高橋のフォームに似ていることを伝えると「本当ですか? うれしいです!」と満面の笑みを見せた。

8回まで三塁を踏ませない完璧な投球だった。130キロ台前半の直球とスライダーを軸に山村国際打線を4安打1四球に封じ、9三振を奪った。完封目前の9回には2死三塁のピンチを背負うも、「負けないぞっていう気持ちで投げた」と、直球で空振り三振を奪い試合を締めた。

これまでも幾度となく投球フォームを変えてきた。変えるタイミングは、テレビやYouTubeで直感的に「かっこいい」と思ったら。まずは自分の気持ちに任せてキャッチボールでまねてみる。感触が良ければ、試合でも取り入れる。高校入学後は日本ハム吉田、パドレス・ダルビッシュ、エンゼルス大谷、ロッテ佐々木朗、そして仙台育英・高橋と甲子園のスターからメジャーリーガーまで、変遷を遂げてきた。いずれも再現度が高く、チームメートから称賛の声が届く。泉名智紀監督(53)も「研究もするし、一生懸命練習する。久しぶりに気持ちのあるボールを投げる良いピッチャー」と大絶賛する。

数々の名投手を再現してきた大野が最も苦労したのが、高橋のフォームだった。2段モーションで左足を高く上げるため、下半身にかかる負担が大きく「足がつってしまったりした」と心が折れそうになった。しかし憧れの投手に近づくため、1日200回のシャドーピッチングと入浴後のストレッチに着手。わずか2カ月でものにし、結果も残した。

この秋の目標は関東大会4強を掲げる。しかし1歩ずつだ。「まずはベスト8に入って、関東に行って、絶対甲子園に行きたいと思います」と誓った。この日の投球は「60点」。5回1死から与えた唯一の四球で40点の大減点を課した。25日の2回戦は細田学園(レジデンシャルスタジアム大宮)と対戦する。大野が次戦もストイックに結果を求めていく。【黒須亮】