麟太郎が超名門校で究極の文武両道に挑む。高校歴代最多の通算140本塁打を誇る花巻東(岩手)の佐々木麟太郎内野手(3年)が、米国のスタンフォード大に進学すると14日、同大学が公式ホームページで発表した。投打でメジャーを席巻する花巻東OBのドジャース大谷の二刀流と形は違うが、佐々木麟も野球と勉強で最高峰を追い求める。

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怪物スラッガーの進学先は、誰もが知る米国の超名門校だった。佐々木麟は「野球だけできる人間ではなく、野球もできる人間になりたい」をモットーに掲げる。入学するスタンフォード大は、世界に名だたる最難関。関係者によると、スカラシップ(奨学金)制度を利用した模様だ。野球をやめた後の人生も考慮し、あえて険しい道に進むものとみられる。

昨年9月には単身で米国を訪れ、5校の大学を見学。再度渡米した今年1月は、父佐々木洋監督(48)と4校を視察。高校の先輩でもあるドジャース大谷からの助言も受けた上で、進学先を絞っていた。

スタンフォード大のホームページでは、米国でのプレーを目指す日本の高校生たちの先駆者として貢献した佐々木麟は、教育の質とメジャーでプレーするという夢の実現に向け、カレッジワールドシリーズに3回連続で出場している同大学へ進学したと説明されている。打率4割1分3厘、出塁率5割1分4厘、長打率8割8厘というデータも紹介。米国の大学は通常2月開幕で公式戦出場が可能になるのは25年度からとなるが、佐々木は3月の高校卒業後の4月から入学予定だという。

文武両道を貫いてきた。中学、高校と成績は上位。得意科目は日本史で、英語は決して得意ではないが、昨秋の部活引退後は週3、4回のペースでオンライン英会話を受講し語学向上に励んできた。情報収集することが好きで、日頃から経済ニュースに目を通すなど学ぶことを苦にしない。

米国の大学野球をランク付けした「ベースボールアメリカ」でスタンフォード大より上位にランクされる7位のバンダービルト大は、候補のひとつだった。「勉強をしたいというのも事実なので、大学生活を通して、(野球以外にも)やりたいことを見つけ、知識、知恵をつけたい」。野球のレベルだけで判断せず、勉強にも重きを置いた形だ。

昨秋のドラフトでプロ志望届を提出すれば、1位指名が確実視されていた。東京6大学の強豪校や、マイナー契約ながらメジャー球団からの誘いもあったというが、米大学進学を決意した。「固定概念にとらわれて生きるのは好きじゃない」というのが、佐々木麟の信念。花巻東の先輩・大谷が前例をつくったように、米国で新たな二刀流を確立する。【山田愛斗】

▽スタンフォード大のデービッド・エスカー監督(ホームページでコメント)「佐々木を我々のスタンフォードファミリーに迎えることをうれしく思います。米国の長い大学野球の歴史で、最も注目される国際的な逸材かもしれません。彼の強打はまさに我々のスタイルにマッチし、全米制覇の目標を達成するために即座に貢献することを楽しみにしています」

◆佐々木麟太郎(ささき・りんたろう)2005年(平17)4月18日生まれ、岩手県北上市出身。幼少時から野球を始め、江釣子小1年時に江釣子ジュニアスポーツ少年団に入団。江釣子中時代は大谷翔平(ドジャース)の父徹さんが監督の金ケ崎シニアでプレー。花巻東では1年春からベンチ入り。甲子園には2度出場し、2年春が初戦敗退、昨夏は8強。父は同校の佐々木洋監督。高校通算140本塁打(公式戦18本)。184センチ、113キロ。右投げ左打ち。家族は両親と妹。

◆スタンフォード大 カリフォルニア州にある世界屈指の名門大学。米国では「東のハーバード、西のスタンフォード」と称され、タイガー・ウッズ、鳩山由紀夫、アグネス・チャンらを輩出。野球部は1892年にリーグ戦初参加。愛称はカージナル。全米体育協会(NCAA)1部、PAC12(太平洋岸)所属。大学ワールドシリーズ2度(87、88年)優勝。同大会出場は21~23年を含めて19度。地区優勝21度。昨季は23勝7敗でカンファレンス優勝を果たし、ポストシーズンを勝ち抜いてカレッジ・ワールドシリーズ(8チーム)に進出するも敗退。新年度が始まる8月からアトランティック・コースト・カンファレンスに移籍予定。主なOBに通算270勝で殿堂入りのマイク・ムシーナ、93年サイ・ヤング賞のジャック・マクダウェル、球宴出場4度の捕手ボブ・ブーンら。現役では韓国代表にもなったエドマン(カージナルス)ホーナー(カブス)クワントリル(ロッキーズ)ら。デービッド・エスカー監督。