<センバツ高校野球:広陵3-1高知>◇21日◇1回戦

センバツが100年を迎えた。敗れて甲子園を後にする敗者には、今夏の甲子園へとつながっていくドラマがある。「涙は夏のため~新しい夢のため~」と題し、さまざまな角度から敗れたチームの物語を紡ぐ。

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雪が舞ったほど寒かった甲子園で、その場所はほんのりと明るい光を帯びていた。高知・箕浦充輝内野手(3年)のあこがれの場所、遊撃の守備位置。大好きな阪神木浪の主戦場で守り、8回にはチームでただ1人、ホームを踏んだ。

三本間にはさまれ、最後は広陵捕手の送球が左の脇腹にドスン。痛かったが、ホームインには胸が騒いだ。「あこがれの場所で楽しんでプレーできました。体も気持ちもレベルアップした自分で、夏に戻ってきたい」と顔を上げた。

高校最後の夏のその先の人生で、また甲子園に戻ろうと思っている。選手ではなく、グラブ職人の立場で。「もともとグラブが好きで、工場を見に行って教えてもらって。いつの間にか(修理を)できるようになっていました」。佛教大まで野球を続けた父康文さん(52)も修理ができたという。「道具は大事にするんやで」という教えは今も大事にしている。

ひもが取れた時に新しい物と取り換え、また形を作る。メーカーに頼む前に、まずは自分で挑戦してみる。そうやって、チームメートのグラブまで何度も救ってきた。将来は専門的な技術を1つずつ身につけていくつもり。使い手から信頼される職人になって、聖地に戻る。【堀まどか】

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