試合が終わってしばらくたつと、女子マネジャーが涙を隠し、笑顔でペットボトルを持ってきてくれた。向上・平田隆康監督(49)が「みんなすごく気が利くようになりました」とたたえていたマネジャーたち。でも、飲めなかった。右手でぐっとスポーツドリンクを握りしめた。

東海大相模に2度リードしたものの、最後は敗れた。「監督の差です」。そう言って間髪入れずに「監督の差です」ともう一度言った。言い聞かせるように。

「強さと優しさがあって、ずっと近くで野球をやっていてほしかった」と人間性を称賛する北野龍彦主将を中心にした3年生。「もっと野球、やりたかったです」と涙をぬぐう。

14年夏、決勝で東海大相模に0-13で大敗した。どんどん点差を離される試合中も「頑張れ!って感じでしたね…」と振り返る。選手はどんどん変わり、専用球場も完成し、10年が過ぎてその東海大相模に食らいついた。「力を発揮できれば勝負になることをしっかり見ていてくれたと思います」と、新チームの選手たちに期待をかける。

球場の外では大勢の人が待っていてくれた。全員の前で背筋を伸ばした。

「本日はこのような大応援団に囲まれて、選手たちと楽しい時間を過ごせたんですけども、監督の差で負けてしまいました。本当に申し訳ございません」

3秒、4秒、5秒と頭を下げる。「この3年生はすごく明るくて、僕らも毎日グラウンドに立つのが楽しくて、ずっと野球をやっていたいなって思える3年生でした」と率直な思いを口にした。それでも大会直前、知徳(静岡)の練習試合後には、勝ったのに、ベンチで珍しく厳しい言葉を発していた。どうしても優勝したかったから。

全体への御礼が終わり、再び3年生へ。涙があふれる。

「申し訳ない、あそこで勝たせてあげられないのは俺のせいだ。スタンドの応援、すごかったし、ワンプレーへの力になったし、本当に勇気もらえたと思う。あと1点、俺のせいで本当に申し訳ない。部長もコーチもトレーナーも日本一なのに、監督がへっぽこだから。でもほんと楽しかったよ。心の底からおまえたちと野球やれて楽しかった。本当に幸せだと思う。3年間、お疲れさま。もうちょっと、やりたかったな。ごめん。でもほんと、ありがとうございました」

赤とんぼも舞い始めた横浜公園で、夏が終わった。【金子真仁】

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