大社の秘密兵器が、早実を窮地に追い詰めた。

11回無死一、二塁。打席には、県大会も含めてこの夏初出場の安松大希捕手(2年)が送られた。

石飛文太監督(42)は「あの場面で選手を集めて聞きました。『ここでバント決められる自信があるもの手をあげろ』と。そうしたら、安松は手を挙げて『サード側に決めてきます』と言ってくれたので、私は信じるだけでした」。

この夏初打席。安松は「とにかく決めるしかないという気持ちでした。監督さんが信用してくださったので、そこは自信を持って。貢献するしかないと」。2球目に合わせ、三塁線をなぞるかのようにきれいに転がした。「奇跡だと思いました」。そして一塁へ全力疾走。「自分も生きてやるという気持ちで走りました」。無死満塁という最高の状況を作り上げた。

自主練習で打撃練習の前に必ずバント練習をする。「人一倍やっていると思っています」という自負があった。出場機会がなくとも「自分は秘密兵器だと思っているので」とポジティブに過ごした。繰り出された隠し玉が、サヨナラのお膳立てをした。

大観衆が安松のバントに見とれたが、当の本人は「自分のおかげではないです。大社高校は守備のチーム。10回、11回の守備で流れを作ってくれたので、自分が決められたんだなと思います」と冷静な口調で振り返った。次戦に向け「出場機会は本当にわずかだとは思うんですけど、とにかく自分がやるんだという気持ちで」。秘密兵器は、虎視眈々(たんたん)と出番を待つ。【浜本神威】