<高校野球岩手大会:盛岡三5-2盛岡大付>◇23日◇準決勝

 盛岡三が盛岡大付に逆転勝ちし、前回甲子園に出場した89年以来22年ぶりの決勝進出を決めた。1点を追う7回裏に一挙4点。県内有数の進学校が、恵まれない環境を克服して強豪私立に競り勝った。

 波乱は7回に起きた。1点を追う後攻の盛岡三が、まず敵失で同点。なお2死二、三塁とし、3番大崎将弥(2年)が中越えの決勝2点三塁打を放った。相手は夏9年連続4強の盛岡大付。柴田護監督(40)は「正直、7回まで持てば…」と苦戦を覚悟していたが「うちにヒーローはいないけど、束になれば勝機はある」と、あきらめなかった。

 ナイターも室内練習場もない進学校。22年前の甲子園に1番右翼で出場した柴田監督が、現3年生が入学した09年に赴任した。午後6時半までしか練習できない中で効率を度外視し、全員で球拾いや同じ練習をして一体感を高めた。春以降、リードされた状況を想定した逆転練習も重ね、選手で1度、監督としては02年の釜石南に続く決勝進出を果たした。

 選手が集まらない現実も、言い訳にしない。現3年生が入部した時、投手と捕手の経験者は1人もいなかった。柴田監督は全員にマウンドで投げさせ、適性を見て育成を開始。遊撃手から転向した安部隆(3年)が今夏から背番号1。愚直に投げ込み、甲子園常連を4安打2失点に抑え込んだ。

 決勝打の大崎は西武菊池と同じ見前中出身。「偉大な中学の先輩がいた花巻東と決勝で戦うなんて…」。恐縮しながらも、目は輝いていた。「でも、かなわない相手じゃない」。94年の盛岡四を最後に、岩手の甲子園切符は16年連続で私立勢が独占している。6月4日に宮古市でボランティア活動を行い「現地の方の生きようとする力に勇気づけられた」ナイン。文武に競う盛岡一、宮古商や釜石商工など沿岸勢。倒してきたライバルの思いを胸に、公立勢の覇権奪還を狙う。【木下淳】