聖地で父を超える!

 第94回全国高校野球選手権(8月8日開幕、甲子園)に南北海道代表として出場する札幌一が25日、甲子園メンバー18人を発表した。「9番・左翼手」で札幌地区予選からフル出場した加勢一心(ひとし=3年)が、南大会と同じ背番号7を獲得。父の道胤(みちつぐ)さん(44=僧侶)は駒大岩見沢の右腕エースとして、85年センバツで1勝している。親子二代の夢をかなえ「尊敬する父を超えて恩返ししたい」と誓った。

 札幌一の加勢が、安堵(あんど)の表情を浮かべた。札幌市内の学校グラウンドで、菊池雄人監督(40)が甲子園ベンチ入り選手を読み上げていく。少しドキドキした。南大会と同じ7番目に呼ばれると「うれしかった。期待に応えたい」。父道胤さんがプレーした同じ聖地に立てると思うと、これ以上ない喜びで胸がいっぱいになった。

 甲子園のマウンドを踏んだ父の勇姿を見て、野球に憧れた。85年春の智弁和歌山、池田戦。駒大岩見沢のエース番号を背負って投げる父のビデオを、小学2年生のころに見た。「カッコよかったんですよ。お父さんて、すごいって」。感激した。甲子園への思いが、幼心に芽生えた。その直後に「野球をやりたい」と両親に伝えた。

 運動能力が高く、札幌一では1年秋から背番号8を付け、期待された。投手兼任で順風満帆だったが、落とし穴が待っていた。昨秋全道決勝の北照戦で、エース知久将人(3年)を延長10回から救援。決勝打を浴び、センバツを逃した。一時は練習に行けなくなるほど、悩んだ。そんな時、尊敬する父の言葉に救われた。「もう1回、やってみれば」。勇気を振り絞って、野球部に戻った。

 春の札幌地区予選は背番号18。すんなりとはいかなかった。菊池監督は「1年秋からレギュラー。ベンチに入れれば使いたくなる」と全道では登録から外した。「自分で(理由を)考えなさい」と突き放した。加勢は2日間、学校とグラウンドの往復を1時間半かけて走った。裏方の仕事に徹しながら、1人でティー打撃に取り組んだ。「つながりの意味、一生懸命やる気持ちの大切さが少しずつ分かってきました」と言う。

 南大会7試合で17打数5安打1打点、打率2割9分4厘だが、5犠打は知久と並んでチームトップ。特に準決勝の北海戦では、2犠打1四球と打線のつながりを呼んだ。父がいたからこそ、つかんだ甲子園。「父を超えて恩返ししたい」と今、強く思っている。【中尾猛】

 ◆加勢一心(かせ・ひとし)1994年(平6)6月2日、岩見沢市生まれ。岩見沢美園小2年から「岩見沢美園スターズ」で野球を始めた。岩見沢光陵中時代は中学硬式の岩見沢シニアに所属し、投手兼遊撃手の1番打者として活躍。好きな言葉は「一意専心」。家族は両親と姉。176センチ、72キロ、右投げ右打ち。