<高校野球宮城大会:佐沼1-0東北学院>◇18日◇準々決勝◇コボスタ宮城

 佐沼が東北学院に延長10回の末サヨナラ勝ちし、25年ぶりの4強入りを決めた。10回裏2死二塁で、3番の鈴木翔太(2年)が中前適時打を放って決着をつけた。

 自分のミスで3年生の夏を終わらせたくなかった。0-0の延長10回2死二塁。4回戦で仙台育英を破った東北学院のエース山下に対して「外角だけを狙っていた」と2球目のスライダーをとらえた。サヨナラだ。仲間の祝福を受けたヒーローは「たくさん迷惑をかけたので、絶対に勝ちたかった。最高の当たりでした」と涙が止まらなかった。

 三度目の正直だった。初回に1死三塁でスクイズを失敗。8回には無死から三塁打で自らチャンスをつくり、直後に4番高橋大和(3年)が中飛を放った。タッチアップで本塁にかえったように見えたが、離塁が早かった。東北学院のアピールプレーで併殺が宣告され「終わったと思った」と肩を落とす鈴木に、ベンチは笑顔で声をかけた。「次はお前に打ってもらうからな」。10回153球で無失点に抑えたエース佐々木暉ら、練習後に食事に行くなど普段から仲の良い先輩たちの思いをバットに乗せた。

 「点を取られない野球」で快進撃を続ける。4回戦までのチーム打率は2割2分1厘だが、失点はわずかに3。鉄壁の守備を作り上げたのは、茂泉公己監督(40)が岩出山を率いていた約10年前、PL学園(大阪)の練習を見学した際に学んだ「ボール回し」だった。「1分3秒以内でダイヤモンド10周」と目標を設定し、達成できるまで終わらない。丸1日を費やしたこともある。監督は「常に重圧のかかる状況を想定してきた」。今大会の無失点勝ちは2度目。緊迫した舞台で内野手の送球エラーが1つもないのは、積み重ねてきた基礎練習の成果だ。

 全校応援を背に私立校を破り、悲願の甲子園まであと2勝。鈴木は「次も先輩たちと野球ができて幸せ」。守備力で巻き起こしてきた佐沼旋風は、簡単には止まらない。【鹿野雄太】