<高校野球埼玉大会:本庄東1-0山村国際>◇22日◇5回戦◇大宮公園

 「よろめきライアン」こと、本庄東(埼玉)のエース水野瞭太投手(3年)が、5安打完封で3度目の8強入りに導いた。左足を高く上げる変則横手投げで、花咲徳栄を破った山村国際の打線を抑え、9回裏にサヨナラ勝ちを収めた。次戦は初の4強入りをかけて春日部共栄と対戦する。

 本庄東の9番井岡将樹捕手(3年)がバントの構えをした瞬間だった。「あっ」。相手投手が投じた初球は、捕手も捕れない暴投だった。三塁から代走の村橋卓弥内野手(3年)がヘッドスライディング。9回裏1死満塁からの決勝点はあっけないものだった。一塁走者の水野は、ガッツポーズを繰り返しながら、優勝したかのように喜ぶナインにぶつかって行った。9回を5安打無失点に抑えた水野は「井岡なんで併殺かと思ったけど、良かったです」とジョークを交えて喜びを表現した。

 05、08年に続く3度目の8強入りは、間違いなく水野が引き寄せた(08年は記念大会のため北埼玉大会)。左足を高く上げ、打者のタイミングを微妙にずらし、時には横から、時には下から投げて打者を幻惑させるのが持ち味。この日の山村国際には「右打者には内角を見せて、外に攻める」方針で打ち取った。今どきの高校生というよりはメガネをかけた哲学者のようでもある。

 水野は秩父郡小鹿野町に住んでいる。帰宅時間を考慮し、本庄市内にあるグラウンドでは17時から19時15分までの2時間強が練習時間となる。その時間にスクールバスが迎えに来るのだ。特進クラスに籍を置いているので、帰宅してからは勉強が中心で「やっても腹筋とかシャドーだけです」と笑った。

 夏の大会、初の4強をかけて戦うのは、同じ小鹿野小・中学校に通った守屋のいる春日部共栄だ。「絶対打たれます。コールドはいやです。死球にしようかな」ととぼけた。だが、守屋は「今年の正月に帰省して遊んだときはこんな日がくるとは思いませんでした。あいつは言うこととやることは違います。きっちり練習もするやつでした。とくに頭の良いやつですから」と誰よりも警戒する。小鹿野町出身の同学年対決から目が離せなくなった。【浅見晶久】

 ◆水野瞭太(みずの・りょうた)1997年(平9)1月14日生まれ、埼玉・秩父郡小鹿野町出身。小鹿野小2年で野球を始め、小鹿野カージナルスジュニアでは主に三塁手。小鹿野中では軟式野球部に所属し三塁手兼投手。165センチ、58キロ。右投げ右打ち。趣味は勉強。家族は両親と弟と妹。