<全国高校野球選手権:北大津11-4常葉学園橘>◇8日◇1回戦

 短い夏が終わった。2年連続2度目の出場の常葉学園橘(静岡)は北大津(滋賀)に敗れた。先発の長谷川彦投手(3年)が直球を狙われ、ソロ本塁打を含む5失点で5回途中で降板した。2、3番手もつかまり計18安打(長打11本)を許した。打線も「ウナギイヌ」こと変則右腕・岡本に7回まで3安打。8回に牛場友哉主将(3年)の2ランなどで一矢報いたが、反撃は遅かった。静岡県勢では9年ぶりに、初戦で姿を消した。

 泣きながら、土を集めた。あまりに早い終戦だった。昨夏のように、甲子園に校歌が響くことはなかった。三浦裕太外野手(3年)が142キロの直球に空振り三振。その瞬間、常葉橘の短い夏が終わった。静岡県勢9年ぶりの初戦敗退。黒沢学監督(33)は「先制、中押し、ダメ押しをされて、完ぺきな負けです」と完敗を認めた。5回途中で降板した長谷川は「力不足です。試合をつくれませんでした」とひたすら号泣した。

 エースは研究されていた。初回、先頭の北林に二塁打を許し、3番山口には3球目に三塁線を破られた。「初回が一番悔いが残る」という、わずか7球での失点。2回には1死一、三塁から9番村井に外角高めの直球を右中間に運ばれ走者一掃。4回も北林に高めの直球を、右中間へ適時三塁打された。4失点はすべて、2ストライクに追い込んだ後だった。北大津ベンチは長谷川を「投げ方は技巧派だが、投球内容は本格派」とみていた。勝負どころは直球に頼る傾向を狙われた。

 しかも、最速は131キロ。県大会より2、3キロ遅く、2本のバント安打を除く8安打中、6本は直球をはじき返された。5回には4番小谷に内角高めを右翼ポールに当てられた。直後の2人の出塁を許し降板。県大会で1人、強敵を抑え込んできたエースの、衝撃のKOだった。女房役の牛馬は「出来は悪くなかった。でも、狙い球を張られてはまってしまった。(相手の狙いが)自分の考えと違い、試合中に修正できなかった」と振り返った。長谷川は「今までやってきたことが、意味のないモノになってしまった」と仲間に謝った。

 決意のマウンドだった。18番だった昨夏は1度も登板がなく「自分は甲子園メンバーだと思っていない」と言うほど悔しがった。エースとなった秋、悲運が襲った。足を引きずり始め、病院に行くと内側が鷲足(がそく)炎という炎症、外側は疲労骨折していた。「完全に治すなら1年」と言われた。だが、誰にも骨折の事実は言わなかった。「背番号1を譲りたくなかった」。

 痛み止めをのみ、ひざ回りの筋肉を鍛えることで補った。夜、瀬名の寮から安倍川まで往復2時間半も走り、下半身を鍛えた。ケガを誰にも気づかせることなく、再び甲子園にやってきた。「甲子園は投げやすく楽しい場所だった。ただ、エースとしての仕事ができなかった。申し訳ない」。悔しさが詰まった夏。涙は止まらなかった。【今村健人】