中日のドラフト1位右腕・中西聖輝投手(22=智弁和歌山-青学大)のピッチングを見た。ストレートがシュート回転している。それは武器にもなるが、現時点での中西投手の総合力では、その武器は生かし切れていないと感じた。
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今の中西のシュート回転で右打者の内角を攻めれば打ち取れる可能性はある。同時に、外角球はとても危険なボールになっている。
先発で4回58球を投げて4安打2本塁打、3失点だった。4回3失点は厳しく言えば物足りない。それも2発を浴びている。これでは、1軍ではなかなかチャンスが巡ってこないだろう。
3回、マルチネスに初球の真っすぐをスタンドに運ばれている。捕手は外角に構えるも、シュート回転したボールは逆球となってインコースよりの高めの甘いボールになってしまい、それをあっさりと仕留められた。
水谷にも2ストライクと追い込んでから、アウトコースを狙った真っすぐが甘く入り、ライトスタンドに運ばれてしまった。いずれも、外を狙った真っすぐがシュート回転して甘くなるという失投だった。
対して内角への真っすぐがシュート回転して打者を詰まらせたのが3度。内野フライ二つと内野ゴロ。これは意図して詰まらせている。中西からすれば計算通りのピッチングということだと思う。
この相反する二つのシュート回転の特性を、中西はどう受けとめているのだろう。一般的に、投手は内角をいかに攻めるかが、ポイントになる。打者も内角をいかに確率良く仕留めるかが、プロの世界では大きな課題だ。つまり、内角は投打における重要ポイントであり、そこで打者と勝負できる可能性を秘めた中西のシュート回転は、ひとつの武器になりうると言っていいだろう。
では、なぜあっけなく2発も浴びるのか。いずれも右打者の外角での失投が長打に直結している。中西の真っすぐの性質がシュート回転であると先ほど触れたが、内角を狙う時、中西の体の開きは確認できなかった。だが、外角を狙った時は、対マルチネスの時も、対水谷の時も体の開きが早かったように思う。
体が開いてシュート回転すると、かなりの確率でボールが抜けてしまう。抜けたボールはいかにシュート回転していようが、球威はなくなり、キレもなくなる。かつ、外角いっぱいを狙った真っすぐが、シュート回転で甘く入れば、打者は見逃してくれない。ましてや、マルチネスの初球のように逆球となって、インコースよりの高めに抜けてしまえば、これはもう棒球に近い。
この内角へ食い込むシュート回転と、外角を狙うも力の抜けたシュート回転、この二つの現象を中西はしっかり認識できているのか。そこは誰よりも本人が突き詰めて取り組まなければならない。でなければ、1軍では長いイニングを任せてもらえないだろう。
中西が内角球で詰まらせているのは前向きな部分だ。それも突き詰めて考える必要がある。内角で打者を詰まらせる理想型は、外角への制球がしっかりしている時に、外角→内角の揺さぶりによって打者は詰まらされる。外角への制球が甘い時、たとえ内角を厳しく突けたとしても、1軍の主力打者なら、その内角を狙われたら仕留められるだろう。
中西は1軍でプロ初勝利も挙げており、短い期間だが1軍のレベルを味わっている。そして今はファームで再び昇格を狙う。であるならば、右打者の内角を自信を持ってえぐる真っすぐを最大限に生かすべく、外角球にこそ心血を注ぐべきではないか。大げさな表現かもしれないが、真っすぐがシュート回転する投手は、この微妙な感覚の中で、生き抜いていくと、私は理解している。
外角を狙って甘いシュート回転で痛打されていては、同じ失敗をただ繰り返すだけになってしまう。外角をきっちり投げきる技術を身につけなければ、酷な言い方になるが、いい内角球も宝の持ち腐れになってしまう。そこを中西には、いちはやく十分な危機感をもって認識してほしい。
58球のうち真っすぐで奪った空振りは0。結果球の真っすぐは7球。このうち2球がホームラン、1球がヒット。7球のうち3球をヒットゾーンに運ばれている。よく考えてほしい中身だ。
私がもっとも問題視したのが、マルチネスに1発を浴びた直後だった。次打者の初球、どういう入り方をするのだろうと見ていたが、マルチネスへの初球と同じ外角を狙った真っすぐがシュート回転し、今度は真ん中高めに抜けていた。打者はスイングして一邪飛に終わったが、ただただラッキーだったに過ぎない。
打者のミスショットに助けられた。言い方がきつくなり心苦しいが、これは問題意識の低さを如実に示している。マルチネスへの失投への認識があるならば、同じミスを繰り返すことはできないと、私は考える。もしかすると、失投を修正するために、再度試したのかも、しれない。そうならば、中西も取り組みはじめているのだと、私の認識も改めなければならないが、私にはそんなピッチングには見えなかった。
マルチネスへの失投が頭にあるならば、たとえひっかけてでも、アウトコースの低めに何とか投げようとするのではないか。私はそう感じた。
この試合での最速は147キロ。球速、球威はアベレージに感じる。その中で、1軍ローテーションをつかむには、内角で勝負できるシュート回転の真っすぐを最大限に生かす術をもっと深く深く掘り下げて練習してほしい。
中西の真っすぐがシュート回転して、結果右打者が内角で詰まるのは、ひとつの可能性を示している。それ単体で、常に勝負できるほどの威力は現時点ではない。でも、カーブ、スライダー、フォークなどの変化球とのコンビネーション、そして外角への真っすぐの安定した制球による内外角の揺さぶりで、内角真っすぐの可能性はいかようにも広がる。
外角はアバウトに、内角だけ気迫十分では、プロの世界ではなかなか難しい。
追い込んでから打者と勝負できるボールへ成長する兆しはある。だからこそ、そこだけで決して満足せず、さらに武器を強力にすることを、中西は今すぐに考えはじめてほしい。(日刊スポーツ評論家)





